23区で郊外的な世田谷と練馬
脱中央線のひそやかな激戦地

 戸建ての街という印象が強い世田谷区や練馬区でも、大型マンションの開発が進んでいるようだ。これまではあまり浮かび上がってこなかった、密やかな激戦地を見ていこう。

 京王線では準特急停車の「千歳烏山」は人気駅だ。駅徒歩3分の好立地で三菱地所レジデンスとセコムホームライフが組んだ総戸数265戸のザ・パークハウス千歳烏山グローリオは、エアリーコート(147戸)が完売し、サザンコート(118戸)も1階のモデルルームなどに坪単価320万円弱の数戸を残すのみとなっている。

 このコンビに野村不動産を加えた3社で11月販売開始予定で取り組むのが、総戸数389戸とかなり大規模な芦花公園 ザ・レジデンス(世田谷区粕谷)。1駅隣の「芦花公園」から6分、世田谷文学館の隣で千歳通りに面している。1・5haの広大な敷地には、ボールの軌道がしっかり確認できるロングレンジで席数の多さでも人気の芦花パークゴルフ練習場があった。ここも北敷地はフォレストコート、南敷地はブライトコートと2棟が建つところなど先の物件に似た雰囲気がある。このマンションの周りには烏山南住宅、芦花公園団地、芦花公園前住宅と大型の共同住宅が集まっている。

 同じ「芦花公園」でも甲州街道を越えた北側8分の所で販売中の低層物件もある。パワービルダーである飯田産業グループの一建設が手掛けるプレシス芦花公園(地上3階地下1階建て・26戸)で、こちらのアドレスは杉並区上高井戸。10m以下という高さ制限がある第一種低層住宅専用地域のため、地下にも掘り下げて住戸を確保したユニークな形態の物件だ。

 急行停車駅「上石神井」の隣で地味な印象だが、西武新宿線「武蔵関」も隠れた新築マンション激戦地である。駅5分で販売中のグローリオ武蔵関(15階建て・44戸)は、3LDKで4390万円から。坪単価では230万〜240万円ほどだ。

 青梅街道を越えた南側にある徒歩12分の大規模物件としては、10月下旬販売予定のパークホームズ吉祥寺北グランヴィラ(地上3階地下1階建て・269戸)がある。三井不動産レジデンシャルが第一種低層住宅専用地域で手掛けるこの低層物件は、保育学童施設も併設、図書館と中学校に隣接しており、徒歩圏内には成蹊学園もある。アドレスは練馬区関町南3丁目だが、マンション名に吉祥寺とうたっているように、最寄りのバス停まで2分、吉祥寺通りをバス9分でJR中央線「吉祥寺」に着くため、時間的には大差ないのだ(バスの待ち時間は除く)。

 同じく「武蔵関」徒歩12分で関町南4丁目にあるウエリス武蔵野関町(6階建て・78戸)は、物件名にこそないが、23区内にあるというよりも「吉祥寺生活圏」という言葉に力が入っていることでは変わらない。こちらは最多販売価格帯が坪単価180万円台程度の設定で、価格的には郊外立地といえそうだ。

 「裏中央線」と呼ばれる西武新宿線だが、冒頭で紹介したシティテラス小金井公園(小平市花小金井南町)も、徒歩8分の最寄り駅である西武新宿線「花小金井」よりもバス6分・徒歩4分のJR中央線「武蔵小金井」を優先して表示しているように、JR中央線へのアクセスを強調している。マンションギャラリーも「武蔵小金井」前にある。住民のために「武蔵小金井」行きシャトルバスの運行も計画しているほどだ。

今回最大の開発物件が売り出される予定の「花小金井」。駅北口は再開発が完了したが、駅近くの古い商店街は再開発含みで閉ざされ、南口の鈴木街道を越えた辺りには昭和な雰囲気の商店街も。その先に開発予定地が控えている

 「花小金井」北口はUR都市機構の手で11年前に再開発され、277戸と巨大な賃貸住宅もできた。南口でも再開発により駅前ロータリーなどができたものの、そこから先には昭和の雰囲気が濃厚に残っている。マンション予定地の向かいには小平市特産のブルーベリー畑もある。現状の近隣商店街では総戸数922戸という巨大な街を受け止めるほどのキャパシティはなさそうでもある。