物流の進化が続いている。3PL(Third Party Logistics)に象徴される荷主の企業成長を支援する物流ソリューションの提供を巡り、運送や倉庫事業者だけでなく、ソリューションを支える情報システム事業者などにより多彩なサービスの展開が続いている。物流ソリューションの選択いかんが企業競争力にも深刻な影響を与えるようになる中で、物流の次なる進化を探った。

3PLの課題と次なる進化
競争力向上の起点を考える

日本で3PL(Third Party Logistics)など物流ソリューションの導入が本格化して約15年。ITの技術向上も背景に急速に拡大を続けている。その流れを振り返りつつ、見えてきた課題や物流改革に取り組む視点を考える。

3PL市場は10年で倍に
さらに高まる荷主の期待

 国土交通省が初めて米国における3PLの実態調査を行ったのは2002年のことであり、以後、3PLに絡む事業を積極的に育成してきた。

 国交省は3PLを、「荷主企業に代わって、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつ、それを包括的に受託し、実行すること」と定義。単なる運送事業者にとどまらない高度な物流サービスの提供を目指している。

 3PLが注目されたのは、大量生産・大量消費時代の大量輸送体制が崩れ、小ロット・多頻度化などの新たな現象への対応が迫られていたことがある。いわば「量」から「質」へのシフトだった。その流れをさらに、コンビニエンスストアやSPA(製造小売業者)の台頭、さらにはネット通販の急速な増加などが後押しした。

 荷主にとっては「品質」「納期」「コスト」などの〝物流波動〟への的確な対応、つまりSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の巧拙が事業競争力や企業収益に大きな影響を与えることが認識されるようになった。単なるコスト削減だけではない物流システムの見直し、つまり物流ソリューションへの期待の高まりが先進サービスの拡大をもたらしたのだ。

 物流専門誌である『月刊ロジスティクス・ビジネス』によれば、日本の3PLの市場規模は14年度が2兆2490億円で、これは、05年度の2倍強に拡大した。

見えてきた課題「非対称性」
荷主の空洞化問題も重要に

日本大学
生産工学部マネジメント工学科
鈴木邦成
物流エコノミスト。一般社団法人日本SCM協会理事。一般社団法人日本ロジスティクスシステム学会理事。主な著書に「図解 物流効率化のしくみと実務」、「図解 すぐ役に立つ物流の実務」(共に日刊工業新聞社)「すぐわかる物流不動産」(共著・白桃書房)など多数。ロジスティクスに関するセミナーや講演会での講師歴多数。

 物流問題に詳しい鈴木邦成・日本大学生産工学部教授は、「物流ソリューションの提供には人と施設と情報システムの三つが不可欠だが、過去15年間、幾つかの事情で環境が整ったことが日本における3PLの普及を後押しした」と解説する。

 例えば施設は、低金利が不動産ファンドによる大型物流施設への投資を促し、情報システムはホスティングなどのクラウド型サービスの普及により大型の自社投資を必要とせずに整備できるようになった。そもそも物流部門をコスト部門と捉えて合理化を模索していた企業と、3PLによる新たなサービス提供を模索していた運輸や倉庫事業者の思いもマッチした。

 「3PLでは、保管型などの中小規模倉庫を拠点集約して、大規模で現代的な流通型の物流センターとして運営するのが基本的なビジネスモデルであり、その意味では05年ごろから相次いだ(ファンドによる)大型(物流)施設の建設は、日本での3PL定着に大きな役割を果たした」(鈴木教授)

 しかし一方で、鈴木教授は、「ある種の逆転現象が生まれ、さらなるソリューションを提供する際の壁になるケースも出始めている」と指摘する。