欠陥マンションの購入前の見分け方と購入後の対処法!
誰でもできる簡単な方法で、地盤などチェックしよう

2017年12月2日公開(2021年2月25日更新)
ダイヤモンド不動産研究所
監修者 碓井民朗:碓井建築オフィス代表 一級建築士、建築家

ここ数年、欠陥マンションの問題が繰り返し起こっている。基礎杭の一部が堅い地盤に届いていなかったり、建物全体を支える梁や壁に後から穴を開けて鉄筋を切断したり、強度不足でコンクリートの床がたわんだり、いろいろなケースがある。欠陥マンションとはどういうものか、どうすれば見分けられるのか、欠陥マンションを掴んでしまったらどうすればいいのか、傾向と対策を考えてみる。

欠陥マンションとは、どんなマンションか?

 そもそも「欠陥マンション」とは、どのようなマンションを指すのだろうか。法律では、「売買などの目的物に通常その物が備えていなければならない性質が欠けていること」を「瑕疵(かし)」と呼び、瑕疵があれば売主などに無償での補修や損害賠償を求められる。ケースによっては契約解除も可能だ。

 新築マンションの場合、建物が完成すると引渡し前に、購入者が室内をチェックする内覧会が行われる。そこで壁紙やフローリングに傷が見つかれば、無償で補修してもらえる。これも軽微な瑕疵といえるが、すぐ直してもらうのでさほど問題はないだろう。

 一方、コンクリートの梁や壁に配管用の穴(スリーブ)を設けるのを忘れたため、後から穴を開けて鉄筋を切断するようなケースは深刻だ。切断箇所が多かったため、建て替えになったケースも過去にはある。

 ただ、「瑕疵」は誰が見ても明らかなものだけではない。梁や壁に後から開けた穴は専門家が見ればすぐわかるが、床や壁の傾き、壁のひび割れは、それが瑕疵にあたるかどうかは専門家でも判断に迷うことがあるという。

 「マンションの建設工事は屋外において、ほとんどが人手で行われます。空調の効いた工場内で生産される工業製品とは違い、一定の誤差がつきもの。そのため、家具を部屋においても壁との間に隙間ができることが多いのです。どれくらいの誤差なら欠陥や瑕疵にあたるのか、ケースバイケースで判断するしかありません」。こう語るのは、長年分譲マンションの設計に携わり、現在はデベロッパー向けの設計監修、購入者向けの購入相談などを手掛けている一級建築士の碓井民朗氏だ。

 国土交通省では2000年にできた「住宅品質確保促進法」に関連して、「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」という目安を公表している。建物における床や壁の傾き、壁のひび割れなどが、建物の瑕疵が原因なのかどうかを見定めるための基準だ。

床の傾斜に対する瑕疵が存在する可能性の目安
レベル 傾斜 構造耐力上主要な部分に
瑕疵がある可能性
1 1000分の3未満の勾配の傾斜 低い
2 1000分の3以上~1000分の6未満の勾配の傾斜 一定程度、存する
3 1000分の6以上の勾配の傾斜 高い
※「住宅品質確保促進法」における「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」

 表のように、床の傾斜については、1000分の3未満の勾配であれば瑕疵がある可能性は低い、1000分の6以上であれば瑕疵がある可能性は高い、などとしている。ただ、注意すべきは、瑕疵がある「可能性が高いか低いか」というだけで、瑕疵の有無が特定されるわけではないことだ。

 2015年10月に建物の一部が傾いていることが発覚した横浜市の分譲マンションでも、床の傾きそのものはさほど大きくはなかった。上記の目安に照らせば、瑕疵がある可能性は低いとなっただろう。

 しかし、建物を支える基礎杭の一部が堅い地盤に達しておらず、また基礎杭を施工したときのデータも改ざんされていたことが判明。そのため、建物の安全性が証明できず、売主の不動産会社の負担で建て替えることになった。

 以上のことから、「欠陥マンション」とは一般的なマンションが備えているべき性能や品質を欠いているマンションを指すが、その判断や証明は実際にはそう簡単なことではない。

 欠陥マンションとそうでないマンションが明確に二分されるのではなく、どのマンションにも大小はともかく、欠陥の可能性はあるというべきだろう。その上で、見た目で何らかの欠陥(瑕疵)がはっきり分かるとか、法律上求められる性能などが証明できないとなった場合、「欠陥マンション」と呼ばれることになるのだ。

欠陥マンションを掴まないための「購入前チェックポイント」

 では、新築マンションの購入を検討している人が、欠陥マンションの問題に巻き込まれないよう、自己防衛するにはどうすればいいのだろうか。「絶対これなら大丈夫」という対策はないし、本当に厳密なチェックを行おうとすれば相当な時間とコストがかかる。しかし、買ってしまってからでは遅い。購入者があらかじめ自分でできる対策について、碓井氏に「4つの方法」を教えてもらった。

(1)デベロッパー、建設会社、設計事務所を確認する!
⇒売主であるデベロッパー(不動産会社)、工事を行うゼネコン(建設会社)、設計を行う設計事務所、この三者がどこかを確認し、これまで欠陥マンションの問題を起こしていないか、問題があった際の対応はどうだったかを調べてみる。それぞれどのような企業体質なのか、建築業界にいる知人、友人に聞いてみるのもよい。

【※関連記事はコチラ!】
⇒新築マンションは売主(デベロッパー)の体質に注意! ダメなデベロッパーがつくるマンションの特徴を公開

(2)販売事務所に備え付けてある「設計図書一式」を閲覧してみる!
⇒設計図書一式とは、そのマンションに関する様々な設計図面をすべて集めて製本したもの。細かい内容は専門家でなければわからないかもしれないが、設計図書一式をちゃんと販売事務所に置いており、希望すればすぐ見せてくれるかどうかで、特にデベロッパー(不動産会社)の体質がかなりわかる。

(3)工事期間(工期)と入居予定日を確認する!
⇒工期は広告などに記載されている「物件概要」で、建築確認の取得日から竣工(予定)日までの期間を計算すればわかる。一般的なマンションでは、階数+3カ月程度だ。さらに、竣工(予定)日から入居予定日までの期間にも注目する。竣工した建物はゼネコンの自主検査と手直し、デベロッパーと設計事務所による検査と手直し、さらに購入者の内覧会による確認と手直しを行う。この期間を最低2カ月程度見ておく必要がある。適正工期+2か月が確保されていないと、工事の遅れなどから大きなミスや手抜きが起こりやすくなる。

(4)地盤を確認する!
⇒堅い地盤(N値という数値が50以上の地盤)が地表からさほど深くないところにあり、しかも凹凸が少ないのが理想。横浜の傾斜マンションは川の近くで堅い地盤が深く、さらに堅い地盤そのものに傾斜や凹凸があったようだ。地盤については、販売事務所に備え付けられている「設計図書一式」の中にあるボーリング図(地盤柱状図)で、堅い地盤の深さや地質を確認する。また、杭伏図という図面には、基礎や杭の位置と長さが記載されている。位置によって長さが大きく違っていないかどうかがポイントだ。

もし、住んでいるマンションが欠陥マンションだったらどうする?

 万が一、自分が住んでいるマンションに欠陥が見つかったらどうすればよいのだろうか。住戸内(専有部)の問題であれば、個別に売主のデベロッパー(不動産会社)と交渉することになる。

 しかし、専有部だけの問題か、外壁や基礎などマンション全体(共用部)の問題なのかは実際には判別しにくい。また、個人でデベロッパーと交渉するのはそう簡単なことではない。誰が見ても明らかな欠陥なら話は早いかもしれないが、例えば床や壁に多少、傾きがあっただけでデベロッパーがすぐに「瑕疵」と認めることは少ない。交渉は長丁場になると思ったほうがいい。

 そこで、理事会(管理組合)に連絡し、理事会を通して売主と交渉することになる。他の住戸でも同じような不具合や欠陥がないか調べたり、専門的な知識を持った第三者に調査を依頼することも考える。

 理事会のもと、区分所有者の間で情報を共有し、合意形成を図ることも大切だ。法的な瑕疵の有無とは別に、何らかの不具合や欠陥があることが明らかになったマンションを売却する際には、買い手にそのことを説明する必要がある。

 もし、不具合や欠陥を隠して売買契約を結ぶと、後から損害賠償や契約解除を求められる。欠陥マンションの区分所有者は、否が応でも一致団結するしかない。売主のデベロッパーなどとの交渉においても、区分所有者の団結こそが大きな力となるはずだ。

マンションに不具合や欠陥が見つかった際の対処法
個人及び理事会の対応
理事会(管理組合)に連絡し、事実関係を確認する
理事会のもとに専門委員会を設けたりする
自分自身も管理組合の役員や専門委員会のメンバーになって主体的に関わる
区分所有者で情報を共有し、合意形成に努める
不動産会社や専門家、行政への対応
理事会から、売主の不動産会社と交渉してもらう。ただし、不動産会社がすぐ動いてくれたり、瑕疵を認めたりすることは少ない
専門的な第三者に相談したり、活用したりする
事実関係をもとに粘り強く売主の不動産会社と交渉する
行政(自治体)やマスコミなどを巻き込み、利用する
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