不動産を高値で売却する方法[2018年]
2018年7月11日 ザイ・オンライン編集部

「相続財産が実家だけ」で、兄弟と揉めない方法は?
相続税の金額を試算、売却価格を査定しておくなど、
専門家の知恵を借りて、準備をしておくべき!

相続財産が実家しかない場合、実家の利用・処分を巡って兄弟間でもめることが多いが、どうすれば、トラブルを回避できるのだろうか。相続が発生したときの相続税の計算方法から、実家の売却・分割などの処分方法まで、実際の相談事例などを元に解説する。(不動産鑑定士・公認会計士 冨田建)

何から手をつければよいかがわからない

 相続財産が実家しかない場合、兄弟でもめやすい。

 今回、相談があったAさんは、お母さん所有の自宅に同居しており、お母さんに万一のことがあった場合の相続について悩んでいた。相続人は長男のAさんと、その妹のBさんだ。

Aさんのお母さんの財産状況
お母さん名義の土地 :都下の多摩地区の某所で200㎡(相続税路線価に基づく財産評価額は5000万円)
お母さん名義の土地上にある自宅建物 :昭和55年新築の木造の居宅、1階50㎡・2階50㎡(固定資産税評価額200万円)
お母さん名義の現預金 :500万円


 会社員で妻子持ち、預金もそれほど余裕があるとは言えない長男のAさんは、下記の不安を抱えていた。

「そもそも相続税がいくら生じるのか?」
「遺産分割時に妹がどの程度の金額を請求してくるのか?」
「長年住み慣れた自宅を追い払われるのではないか?」

 漠然とした不安を抱えているものの、「何から手をつければよいのかがわからない」という状況だった。

 このようなとき、処方箋として推奨したいのは、「現状の財産の評価額と、想定される相続税の額」について、専門家を交えて把握することである。

 このとき、2つ注意したい点がある。

(1)相続税評価額と、実際の民法上の財産評価額は異なる

 相続税評価額はあくまでも「相続税算定用の便宜的価値」であって、実際の財産価値ではない。

 なので、相続税計算過程の財産評価額と、遺産分割に際して本当に問題となる財産価値を混同しないこと。

(2)税の相談やアドバイザリーを受ける際は、必ず不動産に強い税理士を混ぜる

 相続税の計算に限らず、税の相談や税務アドバイス、そして税務申告の代理は税理士以外が行うことは、税理士法で禁じられている。

自宅に子どもが住み続けていると相続税が安くなる

 実際に相続税の概算するにあたって、極めて重要なポイントがある。

 それは、申告期限までに適正に申告することを条件として、亡くなった方が住んでいた家を、その家に同居していた妻や子どもなど、一定の要件を満たす親族が所有し続け、住み続ける場合、その家の土地の価値を「本来の相続税に基づく評価額の2割で見てくれる」という制度があるということだ。

 これを、「特定居住用宅地の特例」という。

 したがって、できる限り、その要件を満たす人が家を引き継ぐことが「相続税の減額の観点からは」合理的となる。

【関連記事はこちら!】
>> 実家の相続で活用すべき「小規模宅地等の特例」を解説! 気をつけたい"3つの落とし穴"と、売却時の注意点は?

実際に相続税を計算してみると…?

 それでは、この場合の想定相続税額を計算してみよう。

(1)Aさんが自宅を相続する前提で、「特定居住用宅地の特例」が適用される場合

  土地5000万円 ×20%
建物200万円
現預金500万円
1700万円 (相続税評価額)

 以上が、「特定居住用宅地の特例」考慮後の相続税計算上の財産価値だ。ちなみに、通常、建物の相続税計算上の財産価値は固定資産税評価額が用いられる。

 ところで、相続税額の計算は、相続税計算上の財産評価額をまず計算し、ここから基礎控除額を控除した上で、一定の手順に基づいて算出する流れになっている。基礎控除額の計算式は、3000万円+600万円×法定相続人の数、となる。

 この場合、民法で定める法定相続人の数はAさんと妹なので2人だから、基礎控除額は、

 3000万円+600万円×2= 4200万円 

 となる。つまり、

 4200万円(基礎控除) 1700万円 (相続税評価額)

 であり、相続税計算上の財産評価額を基礎控除額が上回るため、実は相続税がかからないという計算になる。

(2)Aさんが自宅に住み続けない結果として「特定居住用宅地の特例」が適用にならない場合

  土地5000万円
建物200万円
現預金500万円
5700万円(相続税評価額)

 5700万円(相続税評価額)>4200万円(基礎控除)

 となり、相続税が発生することとなる。ちなみに、仮に不動産の換金等をせず5700万円を相続税上の財産価値として申告する場合は、相続税は150万円となる。Aさんと妹が遺産をどう分け合ったかに応じて、Aさんや妹のそれぞれの相続税の負担額も変わってくる。

 もっとも、子の一人が自宅を相続する場合、その家とは無関係な相続人から不公平だとのクレームがつく可能性がある。このあたりの折り合いをどうつけるかが難しいところではある。

 今回の場合だと、相続税財産評価ベースで見ても土地の価値が5000万円、建物価値200万円なので、他の財産である預金500万円のすべてを妹に渡したとしても、妹からは不公平だとのクレームがつく可能性が高いであろう。

 最悪の場合を想定すると、妹と以下のトラブルに発展する可能性がある。

・何の準備もなくお母さんが亡くなって、遺言がないために、妹がきっちり折半での分割を請求してきて長年住み慣れた自宅を手放さざるを得なくなる
・お母さんが亡くなった時点で初めて自宅の換金に動いても、事前の準備がなかったためにたたき売り同然の安値で大損を被る

 そんな事態を想像するだけでもゾっとする読者も多いのではないだろうか。

 では、それを回避するにはどうすればよいか。

【関連記事はこちら!】
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相続税が発生しないのなら、あとは遺産配分

 もしAさんが自宅を相続でき、住み続けられるなら、その場合は相続税の心配がなくなるので、あとは妹さんといかに相続財産を配分するかである。

 一般の方がよく考えがちなのものとしては、分割・換金しやすいように買い換えておくとか、思い切って実家を売却して山分けするというものがあるが、おすすめしない。お母さんがご健在の間はあくまでもお母さんの自宅である。

 特に、ご高齢の方は、長年住み慣れた自宅から引っ越すことは、子の居住地の近くに引っ越す場合を除いて、抵抗があることが多い。お母さんから切り出したなら話は別だが、親不孝な面もあるほか、下手をすればAさんに不利な遺言を書かれかねないので、少なくともAさんから切り出すべきではないだろう。

 また、共有という選択肢も考えられなくはないが、妹さんの立場からは、「所有しているが故に固定資産税や都市計画税だけ払って、実際は自分で使っていない」というのは不満が残るだろうし、第一、土地の共有はトラブルの元であるので、これは絶対に回避すべきである。

 このような場合、たとえば、下記のような対策が考えられるだろう。

・妹に状況を説明して、理解を求める
・お母さんに生前に公正証書遺言を書いてもらう(ただし、妹による財産確保のための「遺留分減殺請求」に注意)
・前もって不動産屋さんに相談するなど、お母さんが亡くなった時点での換金の可能性を探っておく

 ただ、いずれも交渉や要請の要素があるので、Aさんの一存で決められない弱点があり、安心感はない。

遺産配分は「現預金だけ」という固定概念を外そう

 そこで、筆者はある点に注目した。

 今回の相続事案は、土地が200㎡あるのに建物が1階50㎡、2階50㎡と土地の規模に比べて小さい点だ。建物の建築基準法に基づく建築確認の内容などの如何もあるが、筆者は思った。

「もしかして、この土地は家の部分の敷地と、それ以外に分割ができるのでは…?」

 もちろん、うかつに分割すると、その部分は自宅ではないと見做されて、「特定居住用宅地の特例」の適用対象外となり相続税額が発生することも考えられるのでこの辺りは慎重に検討すべきである。ただ、話を伺う限りは、どうやら分割できる可能性もあるようであった。

 なので、筆者はこう提案した。

 「詳細な調査をしてみないとわかりませんが、建築基準法上の建築確認の内容等や法令上の支障を検討した上で問題がない場合は、相続したタイミングで土地を分割するのも一案かもしれません。要するに土地の一部を分割することが可能であれば、それを渡せば遺産配分が可能になります。ですので、土地の分割が可能であるかだけでも今のうちから調査してはいかがでしょうか?」

 この件に限らず、遺産配分は現預金だけで渡すという固定概念を外すと、遺産配分の選択肢が広がる。そのため、多少、報酬を払ってでも、生前から不動産に強い税理士にアドバイスを仰いでおくのが、最善だろう。

 少なくとも、基礎控除額の計算の仕方だけでも頭の片隅に置いておき、土地の面積×路線価+建物の固定資産税評価額+現預金と基礎控除額のどちらかを高いかを、なんとなくの相続税の発生の有無の感覚をつかめはずだ。読者の皆様の御自身の相続に際しても、ぜひ参考にしていただければと思う。

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