株式レポート
2012年9月20日 マネックス証券

「異例の金融緩和」という解説〜有力な投資材料〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・本日(9月20日)の日経新聞1面記事では、先日日本銀行が金融緩和に動いたことが採り上げられている。この中で、「日米欧の中央銀行が緩和に動く異例の展開」と解説されている。9月になってからECBが無制限国債購入を表明した後に、米国、日本での金融緩和が続いたことが「異例の展開」と評されている(表参照)。


・記事では、「日米欧の景気が同時に低迷していることが異例」だから、「異例な金融緩和」が実現したと解説している。ただ、1990年代以降、米国を中心に世界経済が動き、それで各国の景気変動が起きるケースがほとんどである。だから、2012年春先から日米欧各国経済がほぼ同じタイミングで低迷していることは、「異例」ではなくむしろ「通常」なはずである。

・また、2012年が異例とすれば、米経済よりも、欧州経済の落ち込みが世界経済減速の主たる要因になっている点だろう。ただ、そう考えると、5月に欧州債務問題が深刻化した後、まず7月にECBが利下げを行いそして国債の無制限購入に踏み出し、これに続いて米日が金融緩和に動いたこれまでの経緯は、「自然な」展開に思える。

・つまり、必ずしも「異例」ではないのに、記事で「異例の金融緩和」という表現が使われている。これはなぜか?実際には、「日米欧の3極で一斉に金融緩和に動いた」行動がもたらす副作用・弊害に対する書き手の警戒心が、こうした表現を使わせたのではないだろうか。

・実際に、「金融緩和競争に陥る」「金融緩和の効果が実感できない」など政策効果に対する疑念が記事で強調されている。これらの点について、ここで論評は行わないが、9月に実現した各国の金融緩和をどう消化すべきかについて、見方が分かれていることを、この記事は象徴していると言えるだろう。

9月18日レポートで、FRBが追加金融緩和に大きく動いた経緯、その狙いについて、多くの市場関係者が見誤っていたことを紹介した。本日のメディアの解説記事も、同じ枠組みで捉えることができる。各国の金融緩和がもたらす政策効果が景気復調という形で顕在化すればこうした疑念は和らぎ、この過程で市場では資産価格の変動が起きる。この意味で、メディアの解説記事は有力な投資判断の材料の一つである。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)