株式レポート
2012年12月14日 マネックス証券

デフレを望む不思議な人々〜日本経済の病巣〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

今週末総選挙が行われるが、11月半ば以降、新政権のもとで日銀による金融緩和が強化されるとの期待が高まり、円高修正と株高が起きている(グラフ参照)。ただ、そうした市場の動きが、「気に入らない」方は案外多いようだ。


以下のような、コメントをあるメディアで目にした。「金融緩和が実施されれば、日本国民の大半が資産として保有している現預金には価値の保存の持続性へのリスクが高まる」。これは、どういう意味だろうか?

「現預金の価値の保存の持続性へのリスク」とは何やら仰々しいが、日本経済が他国のようにインフレになれば、その分現金の価値が低くなるのは当たり前である。日本は過去20年弱デフレから抜け出せずにいるが、金融緩和を強化し、他国と同様にインフレ経済に正常化することは、政府も日本銀行も目指していることである。

経済状況がインフレに戻ることを、「リスク」と表現するのは、どういうことなのか理解に苦しむ。こういう意識を持っている方は、過去20年のデフレ下でも、立派に生活してこられた方なのだろう。デフレで生活が豊かになっていると感じ、今後もデフレが続くことを望んでいるのかもしれない。一方「デフレの害悪」が深刻になっていることを、どう考えているのだろうか?

もちろん、金融緩和策が強まりすぎれば、理論上インフレ率が行き過ぎる可能性がある。次期日銀総裁のもとで金融緩和が強化されれば、インフレ率は上昇するだろう。その備えも必要だが、それは明確な物価目標を設定することだ。

11月28日レポートでも紹介したが、自民党などが掲げている明確な物価目標を定めることは、中央銀行が独立性を保つ有効な仕組みである。国民が決めた物価目標に沿って金融政策が運営されることで、金融緩和の行き過ぎがもたらすインフレ上昇を防ぐことができる。だから、世界中の中央銀行が明確な物価目標を導入しているのである。

「金融緩和が現預金のリスクになる」。こうした思考が、日本経済の病巣のように思えてならない。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)