株式レポート
2013年11月18日 マネックス証券

「緩和マネー」に支えられているから米国株は危うい? - 村上尚己「エコノミックレポート」

米国株市場は、先週も年初来高値を更新して上昇した(グラフ参照)。特に先週後半には、次期FRB総裁に指名されたイエレン氏の公聴会での証言が、株式などのリスク資産上昇をもたらしたとされている。具体的にはイエレン氏の発言で、量的緩和を続けるとの観測が強まったと報じられている。


一方で、金融政策への期待が株高をもたらす状況について、メディアでは「緩和マネーに頼る流動性相場は不安定」などの解説も多い。つまり、「量的金融緩和縮小(テーパリング)で、株式などへ流れていた緩和マネーが逆流する」リスクがあり、株安を招く恐れがあるから不安定ということだ。確かに、10月以降は量的緩和の長期化期待で、米国株が上がるという相場展開が多かった。

11月14日レポートでも解説したように、10月雇用統計で判明した雇用者数の改善傾向を踏まえれば、2014年1―3月中にもテーパリングが始まる可能性が高い。メディアで解説されるように、「緩和マネー」が株価を押し上げているのであれば、テーパリングの時期が近付くと、株価が反転するリスクが大きくなる、ということになる。

ただ、それはFRBの「緩和マネー」が、株式市場に流入しているという側面だけを評価しての見方である。当然だが、これまでFRBの量的金融緩和策は、株価押し上げだけが目的ではない。民間部門の支出(消費や投資)を刺激し景気回復をもたらし、完全雇用(失業率を十分下げる)の状況を実現することが目的である。

リーマンショックで世界的に甚大な経済ショックが訪れたにも拘わらず、米FRBが積極果敢に金融緩和強化を続け、米国はデフレ回避に成功し、+2%前後の安定成長を保ち続けた。家計のバランスシート調整、政府の緊縮財政、欧州の景気後退など相応な逆風があったにも関わらずである。過去5年そうした状況にあったから、企業業績が改善を続け、2009年以降でみて米国株は先進各地域の中で最も高いパフォーマンスを実現してきた(グラフ参照)。


実際には、先週のイエレン氏の発言をみると、テーパリングの時期には言及しておらず、それは雇用統計など経済指標次第ということである。イエレン氏の多くの発言は「雇用最大化と物価安定という目標実現のために、金融緩和が必要」というこれまでの金融政策の方針を継続することや、完全雇用実現を重視する、などである。

そう考えると、先週の株高をもたらしたのは、量的緩和長期化(テーパリング先送り)よりも、雇用回復を最優先に掲げ成功を収めてきたFRBの金融政策をイエレン新総裁が引き継ぎ、それが一段の経済の安定成長をもたらすことへの期待、が主たる要因ということになる。テーパリングについても、「労働市場などが相応の回復をうけてはじめて踏み出す」というFRBの判断が妥当であると、マーケットは認識し始めたということではないか。

この筆者の見方が正しければ、メディアで懸念される、「緩和マネー」に依存しているから米国株のリスクが高まっている、という見方には一線を画した方がよいということになる。つまり、テーパリングや緩和マネーへの思惑よりも、景気回復を示す経済指標の改善が、素直に株高を支える構図が続くのではないか。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)