世界投資へのパスポート
【第329回】 2014年8月25日 広瀬 隆雄

イエレンFRB議長の発言、
「データ次第(data-dependent)」は
投資家の足かせが外されたことを意味する

【今回のまとめ】
1.先週の米国株式市場は高かった
2.ジャクソンホールでは何も新しい事は出なかった
3.イエレン議長は、かく乱するようなメッセージを乱発した
4.その陰で、長期に渡り、何が何でもゼロ金利を維持する方針は、引込められた
5.データ次第という言い方は、明日にも豹変する可能性があることを示唆

米国株式市場は堅調

 先週の米国株式市場はダウ工業株価平均指数が+2%、S&P500指数が+1.7%、ナスダック総合指数が+1.6%と堅調でした。

ジャクソンホールのイエレン議長のスピーチ

 注目されたジャクソンホール・シンポジウムにおけるイエレン議長のスピーチは、結論から言えば何も新しい事は出ませんでした。

 イエレン議長は、普段にも増して、利上げを考慮する際の注目点を、あれこれ片っ端から列挙し、せっせと「煙幕」を張りました。

 具体的には失業率にはもちろん注目するけれど、最近、連邦準備制度理事会のスタッフが考案した19のデータポイントから構成される労働市場コンディション指数(LMCI)も参考にするということがシグナルされました。

 労働市場は改善しているようでもある、そうでない面もある……

 そういう、どっちつかずの、市場参加者をかく乱させるメッセージがスピーチ全体に散りばめられていました。そして「でも結局、データ次第なのよねぇ」という一言を添え、FRBの意図を読みことを不可能にしたわけです。

 このスピーチの後のフェデラルファンズ・フューチャーズの動きを見ると、投資家は金縛りにあったようにほとんど動いていません。そこではこれまで通り、来年の6月頃に最初の0.25%の利上げがあり、9月までにはさらに0.25%利上げされるようなシナリオを織り込んでいます。

 鳴り物入りで囃された割には、ジャクソンホール・シンポジウムは「肩すかし」に終わったのです。

 しかし……

 それではジャクソンホール・シンポジウムでイエレン議長は何も達成しなかったのか? といえば、それはそうではありません。

 これまで鎖につながれていた投資家は、気がつかないうちに足かせを外されていたのです。

 つまり投資家はFRBから「当分の間、ずっと遠い将来まで、未来永劫に政策金利はゼロに据え置く」という誘導をこれまで受けてきました。しかしデータ次第(data-dependent)という言い方は「あ、そりゃそのときのデータ一発よ」という感じで、豹変しなければいけないデータが出れば、あっという間に景色が変わるのだというニュアンスに、こっそり置き換えられているのです。

 でも投資家は「ずうっとこのままだ」という催眠術から未だ目を覚ましていないので、自分の足首からチェインが外されていることに気付かないわけです。