──昨年11月に出版された『社長はなぜ、あなたを幹部にしないのか?』が大変好評だとうかがっています。

小山 2月の時点で4万5000部、ビジネス書としては上出来だと思います。これまで私は社長向けの本だけを書いてきましたが、今回は幹部を目指す管理職や一般社員に向けて書きました。会社を変えるには、社長だけでなく幹部も変わらなくてはならないと考えたからです。

『社長はなぜ、あなたを幹部にしないのか?
 ―イエスマンこそが会社を救う』

(日経BP社・1575円)

【もくじ】
第1章 【心構え編】
  □社長の決定に不満があるなら会社を辞めよ
第2章 【戦略編】
  □変化を厭う管理職は必ず淘汰される
第3章 【社員教育編】
  □強制的に教育しなければ部下は永遠に成長しない
第4章 【モチベーション編】
  □自発的に仕事をする部下など存在しないと思え

 幹部を変えるには、幹部の仕事を明確にしてあげることが大切です。社長の仕事は「決定」です。一方、幹部の仕事は「実行」です。社長から言われたことを、そのまま実行できるイエスマンこそが優れた幹部です。その点を理解していない人が多い。もちろん社長が常に正しい決定をするとは限りません。でも、皆で長時間考えたからといって正しい答えが出るわけではない。であれば、最初の行動はとにかくスピーディーに起こすべきです。すばやく行動すれば、仮に社長の決定が間違いだったとしても、修正もすばやくできるわけです。

──強烈なトップダウンには反発する社員もいそうです。

小山 社長が周囲の意見を聞きながらのんびりやった結果、会社が倒産してしまったら元も子もありません。特に中小企業では、リスクを取れるのはオーナー社長だけ。役員も管理職もリスクは取れません。

 したがってワンマンと言われようが社長が独断で決定し、それを社員に愚直に実行させるのが正しい。

 確かに反発する社員もいるでしょう。そこで私はいつも「この会社を選んだのはあなた自身だ。私のやることに納得がいかないなら辞めるか、自分自身を変えるしかない」と言っています。これは社員に冷たいのではなく、あくまでも私と同じ価値観を共有できる人と一緒に仕事をしたいからです。社長としては、誰が辞めても、回っていく組織をつくることも重要です。

経営計画書で社員と価値観を共有

──社長と社員が価値観を共有するためにするべきことは?

小山 社長の決定を明文化することです。武蔵野では手帳サイズの「経営計画書」を作り、全従業員に配布しています。そこには経営計画の数字だけでなく、方針や年間スケジュール、さまざまなルールなどが書かれています。このルールブックをベースにしているので、社長と役員、管理職の考えがぶれることはありません。

武蔵野の“見える化”経営を支える「経営計画書」。数字、方針、スケジュールを1冊の社員手帳にまとめてある。

 たとえばクレーム対応のページには、クレームの発生の責任は社長にあること、発生時はただちに役員と上司に報告して事を大きくすること、クレームの責任は追及しないが、報告・連絡を怠った場合は賞与を半分に減額すること、など具体的に書かれています。社員にとって問題は報告しづらいものですが、それが大問題に発展することもある。対応法やそれを怠ったときの罰則をこうして明文化することで、速やかに報告がなされるというわけです。

徹底した社員教育が自立型組織の根幹

──武蔵野では2000年度、10年度と2度にわたって日本経営品質賞を獲得しましたが、どのような点が評価されての受賞だったのでしょうか?

小山 00年度のときは「トップの強力なリーダーシップ」が評価されましたが、10年度のときはまったく逆の「現場主導型の経営体制」が評価されました。00年当時は社員教育ができていなかったので、超トップダウンでやるしかありませんでした。その後、社員教育に力を入れ、社員の考える力が育ってきたところで、ボトムアップへとギアチェンジしたのです。それまで私一人で作っていた経営計画書なども、全部社員に作らせるようにしました。当初は苦労しましたが、今では社員主体の経営ができるようになっています。

──どのような社員教育を行っているのでしょうか?

小山 社員教育の徹底ぶりは質よりも回数を示すことで理解できるでしょう。たとえば私は「早朝勉強会」を半期で20回程度実施し、幹部社員に受けさせています。これを20年以上続けています。これだけの回数を積み重ねてきた実績はばかにできません。社員だけでなくパートやアルバイトへの研修も充実させています。

 また新入社員に対する教育では、インストラクター制度を設けています。一般的なOJTは、部署ごとに先輩が教育しますが、それでは先輩によって教育レベルに差が出ます。新人指導の専門職のインストラクターが横串で新人の成長を指導することで、きめ細やかな対応ができ教育レベルを合わせていくことができます。

 徹底した社員教育を行うことで社員個人が成長した結果、現場主導型の組織体制が確立できました。その結果、経営サポート事業だけでなく、競争が激化しているダスキン事業でも業績を伸ばし続けることができています。

──武蔵野の経営サポート事業の特徴はどういうところにありますか?

小山 中小企業の経営者や幹部社員に向けて、経営や事業承継に関する各種セミナーを実施しています。現役社長である私が講師を務めるのが、当社の経営セミナーの特徴です。講義を聴くだけでなく、現場を見学していただき、儲かる仕組みを目で見ていただく「現地見学会」も人気があります。沖縄から従業員35人全員を連れて参加してくれた企業もあります。

 経営サポートパートナー制度の会員企業には、セミナーや勉強会はもちろん、個別支援、同行体験などさまざまなプログラムを用意しています。これまで12年間で432社が会員企業となりました。3割の会社が赤字の状態で入会してきますが、これまで倒産した会社が1社もないのは胸を張れる実績です。

 また、会員全体の2割は過去最高益を達成しています。経営計画の作成から人材開発までマンツーマンで具体的なアドバイスをすることもあります。今後も中小企業の経営を徹底してサポートしていきます。

武蔵野の「儲かる仕組み」について小山社長が熱く語るセミナーには、本気で会社を改革したいと考える経営者が毎回多数参加する。

制作/ダイヤモンド社企画制作チーム
週刊ダイヤモンド2012年2月27日号と同時掲載
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