シリーズ環境/CSR 森林とかかわる企業の取り組み

森林の減少は生物多様性の消失だけでなく、地球温暖化をも促進する。森林が開発されることで樹木や土壌にストックされていたCO2が短期間に大気中に放出されるからだ。途上国の森林減少をどう食い止めるかが、ポスト京都の枠組みのなかで注目されている。今年12月にデンマーク・コペンハーゲンで開催される気候変動枠組条約締約国会議COP15でも重要なテーマの1つとなるだろう。さらに来たる2010年は、国連が定める「国際生物多様性年」。名古屋で生物多様性条約締約国会議COP10が開催される。森林や生物多様性保全に果たすビジネスの役割にも注目が集まる。

イラスト/藤原義夫

減少し続ける世界の森林と増加し続けるCO2排出

森林はわれわれにさまざまな恵み=生物資源や生態系サービスをもたらしてくれる。森林を失えば、その恵みも同時に失ってしまうことになる。途上国の森林の減少は、グローバル経済に組み込まれるなかで進行している。食い止めるにはどうしたらいいか。取り組みはようやく始まったばかりだ。

環境ジャーナリスト/環境教育コーディネーター 小澤祥司

人類と森林との付き合い

 オランウータンはマレー/インドネシア語で「森の人」という意味だが、この言葉は示唆に富んでいる。オランウータンに限らず、類人猿は基本的に森で暮らす。人間の祖先はその森を出て「草原のサル」になった。正確に言えば、乾燥化が進み、森が縮小して出ざるをえなくなったようである。草原には恐ろしい肉食獣が跋扈していた。猛獣から逃れるために人間の知恵や社会性やコミュニケーション能力が進化したのではないかと考える学者もいる。それに比べて母なる森は恵み深く、穏やかだった。
 その「失楽園」の遠い記憶がなせる技なのか、人間は、恵み豊かな森を切り開き、利用してきた。
 以前オーストラリアのタスマニア島を訪れたとき、島を覆う原始のままのように見えた森林のほとんどが「二次林」であると知って驚いた。タスマニア島の先住民は、森に火を放ち、草原を維持してそこにやって来るカンガルーなどの獲物を狙っていたのだという。ヨーロッパ人が来島後、タスマニア島人は滅ぼされてしまった。その後回復したのが、現在の森林であるという。オーストラリア大陸でも同じような一種の森林管理が行なわれていたようだ。自然との共生をしていたと思われるオーストラリア先住民だが、事実はそう単純ではなかったのかもしれない。それでも狩猟採集生活であれば、人口もさほど増えないし、森林を破壊し尽くすことはなかったのだろう。
 しかし、農業が始まり文明が起こると森林の大規模な破壊が進むようになる。そして、森の喪失とともに、その恵みを失って滅んでしまった文明が幾多もある。

3秒でサッカー場1つ分の森林が消える

 森林の減少は今も、それも猛スピードで進んでいる。
 国連食糧農業機関(FAO)が2年に一度発表している「世界森林白書(State of the World’s Forests)」の2007年版によれば、世界全体では毎年0.2%ほどの割合で森林が消失している。年間の森林消失面積は730万ヘクタール。約3秒ごとにサッカー場1つ分の森が消えていることになる。地域別に見ると減少の度合いが激しいのは、東南アジア、アフリカ、そしてラテンアメリカだ(図表参照)。これらの地域には熱帯雨林が広がる。世界のほかのどこよりも数多くの動植物が暮らし、生物多様性のホットスポットともいわれる。人類にとっても多くの陸上生物にとっても「故郷の森」といっていい。

シリーズ環境/CRS 「森」 協賛企業

小澤祥司
小澤祥司

出版社勤務などを経て、環境問題特に生物多様性や自然エネルギーについて執筆活動を行なうと同時に、NPOの支援や自治体・企業などの環境政策のアドバイザーを務める。日本大学・宇都宮大学非常勤講師。著書:『メダカが消える日』、『コミュニティエネルギーの時代へ』(以上、岩波書店)、『マグロが減るとカラスが増える?』(ダイヤモンド社)など。
ozawashoji@gmail.com