創業13年にして10期連続成長を続けるフォーデイズ和田佳子社長が、更なる進化を求めて経営学を学ぶ。第3回は、家庭では病に倒れた妻を守り、3人の子どもの子育てに奮闘しつつ、会社では卓越したマネジメント力で数々の大事業を成功に導いた佐々木常夫氏に、人材育成、ワーク・ライフ・バランスを見据えた企業の姿勢を問う。(2010年12月24日/帝国ホテルにて)

[フォーデイズ株式会社代表取締役社長]和田佳子氏[株式会社 東レ経営研究所 特別顧問]佐々木常夫氏

会社のカラーに
「染まる、染める」時代じゃない

和田:振り返ってみれば、起業前の私も一サラリーマンでした。社内での人間関係、特に上司との関係性に思い悩んだ一人で、佐々木さんのご本を、私の会社員時代に読みたかったと思います。社内の人間関係という課題を残したまま独立起業を選び、1997年の創業当初は私とアルバイトの子の2人でスタートしました。それが今では全国に24万人以上の会員さんがいらっしゃるまでになり、近年は、業績のいい企業という期待をもって新入社員が入社してきます。社員が私と同じ轍を踏まないようにとは思うものの、サラリーマンを失敗した者が、今や経営者として期待に応えていかなければならない立場にあることに戸惑いを感じます。

佐々木:サラリーマンを失敗したからこそ、今の成功があるのですよ。私はいつも部下に「東レが最終の職場じゃないよ」といってきました。これは転職を勧めているわけではなく、転職しても通用するスキルを磨くように日々努めなさいということです。和田さんは会社を飛び出して10年で年商300億円を達成したのですから、決断は正しかったのだと思います。その偉業に感服します。

和田:ありがとうございます。私が会社に在籍していたころは、ちょうどバブル期だったこともあって売上向上が第一優先。職場の同僚とはいえ、ライバル視した競争原理が色濃い雰囲気でした。佐々木さんが、社内の人間関係の大切さ、コミュニケーションの重要性を説いていらっしゃることにとても共感いたします。

佐々木:私は会社においても、社会においてもマイノリティな人間でしたし、今もそうです。多くの人は新卒で会社に入社すると、会社のカラーにいち早く染まろうとし、会社もそういう社員を望みます。双方がそれでは、モノカルチャーな企業になってしまいます。高度経済成長時代にはそれでよかったかもしれません。人より多く働けば成果がついてきましたし、トップの鶴の一声で、異論もなく猪突猛進するスピード経営が功を奏していました。しかし、今はそういう時代ではありません。私の書いた本が支持されるのは読者の方々が、私のような生き方を求めつつ、そうではない状況に置かれている今の社会状況の反映ではないかと思います。身近に胸の内を明かせる相談相手もいないという職場に、私は危機感を覚えます。異なる意見を受け入れるダイバーシティ(多様性の受容)のない組織は、グローバル化していく今の時代において、とても脆弱だと思うのです。

重要度をランク付けして、
手を抜くことも必要

和田:近年、ワーク・ライフ・バランスを求める声が多くの企業で出ています。当社はネットワーク・ビジネスというスタイルなので、会員さんは自分の時間を上手に使って働いている方が多いのですが、一方の社員はさまざまな要因で定時退社がままならないのが実情です。組織としての効率化を推進するとともに、自己管理能力を高めるためにもワーク・ライフ・バランスの重要性を伝えていきたいと思っています。

佐々木:ワーク・ライフ・バランスもダイバーシティという概念に包含されるものなのですが、高度経済成長期の感覚が根強く残っている経営体質には理解されにくい。寝ても覚めても仕事のことを考えることをよしとする価値観や、ワーク・ライフ・バランスがコストアップにつながるという危惧を、経営者が払拭できるかどうかがカギです。社員を機械のようにフル稼働させても成果は上がりません。ワーク・ライフ・バランスが正しく機能すれば、社員満足度が高まり、生産性が上がり、優秀な人材が集まる。それがこれから発展する企業のあり方だと思います。

和田:佐々木さんが40歳で課長に昇進されたときには、奥様が急性肝炎で入院されて、自閉症のご長男をはじめ3人のお子さまの世話と奥様の看病をされていたとご著書に綴られていますが、仕事と家庭の両立したタイムマネジメント術は目を見張るものがあります。

佐々木:私の課は会社の収益の7割を担う、とにかく忙しい課でした。一人月平均60時間の残業が当たり前で、前任の課長から引き継ぐ際「これからは土曜日も出勤しなければならないよ」と忠告されたほどでした(笑)。しかし、それでは家族との時間がつくれませんから、私が就任してからは土曜日の会議も平日夜の会議も廃止し、それまで夜の9時、10時まで働いていた課員も全員6時に退社できるように改革しました。

和田:そうした抜本的な職場改革の一番の決め手はなんだったのでしょうか。

佐々木:ダラダラ仕事をさせないことです。そのために仕事に重要度ランキングを付けることを徹底させ、それに基づいた業務計画書を提出させるようにしました。一番重要な仕事をランク5として、すべての仕事を4、3、2、1とランクを付ける。私が、部下13人の過去1年間の仕事を重要度ランキングに照らし合わせたところ、実質的な仕事は4割でした。また、仕事にはデッドラインを決めて、それを厳守する。会社の仕事は、ある面で雑用のかたまりみたいなものですから、「手を抜いていい」と上司がきちんと指示してやらないと、部下はどの仕事も完璧にやろうとします。こうして仕事量を半分に削減することに成功しました。この時期には3つの課を兼務しましたが、どの課も定時退社で、業績を上げました。

INDEX

PROFILE

写真:佐々木常夫氏

佐々木常夫ささき つねお

1944年秋田県生まれ。1969年東大経済学部卒業、同年東レ入社。自閉症の長男がおり、1984年、課長に就任後、妻が肝臓病で入院を繰り返すうちに鬱病を併発。家事全般を負担しつつ、6度転勤し、破綻会社の再建や数々の事業改革を成功させ、2001年同期トップで取締役、2003年には東レ経営研究所社長に就任する。経団連理事、政府の審議会会員などの公職も歴任。近著『働く君に贈る25の言葉』(WAVE出版)は12万部突破。

写真:和田佳子氏

和田佳子わだ けいこ

明治大学政経学部卒。化粧品会社ノエビア勤務13年等を経て、1997年フォーデイズ株式会社を創業。「ナチュラルDNコラーゲン」の商品開発と、既存のネットワーク系ビジネスとは一線を画す独自の販売システムにより、2009年まで10期連続増収を達成。年商300億円を超える企業のリーダーとして現在に至る。著書に『なぜ9割もリピーターになるのか』(ダイヤモンド社)。