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省エネ化の加速、スマートハウス人気、認定低炭素住宅、二世帯住宅……住宅の省エネ化は今に始まった話ではないが、ここに来て新たな展開が起きている。東日本大震災を機に起きた消費マインドの変化が、住宅政策の転換、地球温暖化対策などと結び付き、「新たな省エネ住宅像」を結びつつあるのだ。取材・文/西 亮子 撮影/石原敏彦(スタジオアモン) イラスト/村松仁美

"攻めの省エネ"で進化する日本の住宅

住宅の選択基準としては従来、「立地」「価格」「間取り」の3要素が中心だった。ところが東日本大震災以降、「地盤」「構造」を挙げる人が目立ち始め、最近さらに「省エネ性能」を高く評価する人が増えている。変化の背景に何があるのか。住宅評論家の櫻井幸雄氏に聞いた。

ロングライフ住宅でランニングコストを削減

櫻井幸雄
櫻井幸雄(さくらい・ゆきお)
1954年生まれ。84年に住宅情報誌の記者として取材活動を始めて以来、毎年200件以上のマンションや戸建てを探訪。実際に歩いて得た情報を基に、新聞、雑誌、テレビなどで評論活動を展開している。主著に『知らなきゃ損する!「21世紀マンション」の新常識』(講談社)、『妻と夫のマンション学~50歳からの賢い購入術』(週刊住宅新聞社)、『ふたりの新居選び 〜購入までのダンドリ編』(週刊住宅新聞社)、『儲かるリフォーム』(小学館)などがある。

 2012年度の税制改正では、認定長期優良住宅における所得税特別控除が2年間延長された。また、新たな低炭素まちづくり促進法の制定に伴い、省エネ性能が高い認定低炭素住宅を取得する場合も、優遇策が受けられるようになる。

 国は長期優良住宅と低炭素住宅という二つの認定制度を運営していくことにより、長く使える省エネ性能のよい家を増やそうとしている。

 そうした大きな流れに加え、「消費者マインドにも変化が見られる」と櫻井氏は指摘する。

 「東日本大震災以降、経済の停滞、減速に対する不安感が色濃い。この先、給料は下がるかもしれない。一方で電気代は確実に上がるだろう。家を建てるなら、長い目で見てこの際、エネルギー消費をスリム化させようと考える人が増えました」

 年々、住宅の長寿命化が進み、今では20~30年で建て替えるのではなく、100年先を考えて住まいを選ぶ人も多い。イニシャルコストだけでなく、ランニングコストにも目が行くのは当然のこと。省エネ住宅は長期的に「生活防衛に結び付く」と考えられるようになってきた。

ゼロエネルギー住宅やLCCM住宅も実現

 戸建ての場合は、従来は省エネ性能が低い家も多く見られた。建築基準法に省エネ性能についての定めがなく、「断熱の手抜き」が横行してきたのだ。

 しかし、この点でも流れは変わりつつある。建築時の省エネ基準の義務化が、20年には導入される見込みだ。最低基準が引き上げられるのである。

 では、技術レベルはどうか。

 「日本の省エネ住宅は試行錯誤で進化してきました。高気密・高断熱化、結露防止と窓ガラスの複層化、室内のカビ対策やシックハウス症候群対策としての24時間換気の義務化――その都度新たな技術を積み重ね、ようやく現在のゼロエネルギー住宅やLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅が実現するところまで来たのです」

 ゼロエネルギー住宅とは、エネルギーを使った分だけ太陽光発電などの「創エネ」で補える住宅のこと。前提として、住宅の「省エネ」が徹底して進んでいることが求められる。

 LCCM住宅とは、資材の調達から建築、居住を経て、解体、廃棄するまでのライフサイクル全体で排出する二酸化炭素量が、エネルギー収支でマイナスになる住宅。こちらも「省エネ」徹底が前提となる。

 「すでに住宅の省エネは、大手ハウスメーカーの企画提案型住宅を中心に、実現可能な範囲は達成し尽くした感があります」

スマートハウスからスマートシティへ

 国は今後、ゼロエネルギー住宅を中小工務店も建てられるように、補助金を交付して支援していく考えだ。一方ですでにゼロエネルギー住宅を達成した大手ハウスメーカーは、スマートハウス競争に突入している。

 スマートハウスは、太陽光発電などの「創エネ」と、蓄電池にためる「蓄エネ」および、売買電まで含めたエネルギーのコントロールを行うHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を備えた住宅だ。

 その台頭の陰には、IT技術の進展があるのはもちろん、蓄電池の性能向上も見逃せない。

 「住宅用蓄電池は自動車用の高性能蓄電池を転用したもの。さらに今後は電気自動車を非常時住宅用蓄電池と考え、普段から太陽光発電による電気を車に蓄えるスタイルが増えるはず。電気自動車の普及が、スマートハウス拡大の鍵になります」

 スマートハウスは、住宅の屋根で電気をつくり、自宅内にためて使うというミニマムなエネルギーサイクルを形づくる。しかし、自然エネルギーはあくまで不安定なエネルギー源だ。

 「そこで、まず1戸ずつのスマートハウスを造り、それをつないで街単位で安定させる形になり、戸建てやマンションまで一体化させたスマートシティへと発展していくはず。今はその壮大な進化が始まったばかりといえるでしょう」

住宅の省エネ基準の変遷

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