ビューポイント View Point 2013 立命館大学

「多様性」と「機会」を提供しグローバルな舞台で活躍できる「知的現場力」を養う

「立命館大学(R)のDNA」──情勢を切り拓いていく人材育成を検証するこのシリーズ。第5回は、R-DNAを受け継ぐ卒業生を紹介する。政策科学部出身の山本一路氏は、大手コンサルティング会社を経て投資ファンドに移籍、その後一転して現在、貧困農村の生活改善と持続可能な農業の実現を目的とするBOPビジネス※に取り組んでいる。大学時代「多様性と機会」に恵まれ、グローバルな視座とチャレンジする行動様式を学んだという。彼の師である立命館総長特別補佐のモンテ・カセム教授が与えたものとは?
※BOPビジネス・・・・・・BOPは「Base of the Pyramid」の略。
世界の所得別人口構成の中で、最も収入が低い所得層を指す言葉で、約40億人がここに該当すると言われる。
BOPビジネスは、同層を対象にしたビジネス。

 タイ北部の都市チェンライから3時間、ミャンマーとの国境に程近い山間地域で今、山本一路氏が携わる農村開発事業が進行する。貧困層が集中する同地域に施設園芸を展開し、イチゴ栽培を試みているのだ。イチゴは冷涼な気候に適し、(亜)熱帯のタイには向かない。一方で輸入品を中心に当地でも人気があり、かつ高級作物。栽培できれば施設コストを賄い、現地への所得還元も可能になる。

「インドシナ半島では農地確保競争が激化しています。農地買収により伝統的な自給自足の生活様式が損なわれ、大規模プランテーションにより環境多様性が損なわれています。また、不適切な肥料・農薬使用により土地の活力が低下、収量維持の為に一層使用量を増やさざるを得ない悪循環から農家の資金繰りが悪化し、貧困が助長される状況も散見されます。こうした状況に対し、施設園芸や環境制御など日本が有する技術を用いて生産性を高めることで小規模でも採算化し、かつ各拠点をネットワーク化して共同運営することで大規模プランテーションに伍していける新基軸を打ち出せればと考えています」と語る山本氏。社会開発や環境との共存というテーマは、立命館大学時代に培われたものだ。

知的な裏付けのある「現場力」を培う

 当時、山本氏の指導教員であったカセム教授は、「彼は当初から優等生だったのですが、優等生ほど狭い型枠にはまりやすい傾向があります。そのため、常識に捉われず、大きな視点(マクロビュー)から物事を捉えることを徹底して教えました」と語る。「もう一つ大切にしたのは、"知的現場力"。知的な裏付けのある行動力がないと、事業を長続きさせられず、社会の構造を変えるに至りません。用意された道ではなく自らつくり上げた土俵で、知的現場力を生かしながら活躍する現在の彼の姿を見るのは、教師としてとてもうれしいことです」。

 山本氏が学んだ政策科学部は、当時学部ができて4年目。新しい学部とあって多種多様な学生のるつぼだった。音楽やダンスの道を志す者、ボランティアや社会貢献に関心を持つ者、政治家や官僚を目指す者、ITベンチャーブームの中で既に起業している学生もいた。「そこには多様性(Diversity)と機会(Opportunity)が溢れかえっていました。教授陣の度量が大きく、学生の"何かやろう"を心から応援してくれました。学びたいなら、物理的な空間に捉われず、どこにでも飛び出せばよいと。問題意識に基づいて"創造"に携わる機会をたくさん提供していただきました」と山本氏は振り返る。

「閉そく感に捉われ、不安を起点に将来を考えないでほしい。若い人には、将来を“創造”と共に考えてほしい。今あるものに心捉われず、将来をよりよくするために新たに何が必要で、何を創るべきか。自由な発想で、可能性にチャレンジしてください」とは山本氏から学生たちへの助言だ。
モンテ・カセム教授と山本一路社長

シードタイム
山本一路代表取締役社長

北海道生まれ。2001年立命館大学政策科学部卒業。マッキンゼー・アンド・カンパニー、アドバンテッジパートナーズ勤務等を経て、BOPビジネスのAIHE(アイヒ)プロジェクトを立ち上げる。2012年シードタイムを立ち上げ、現職に。

学校法人立命館 総長特別補佐
モンテ・カセム(Monte Cassim)教授

1947年スリランカ生まれ。前・立命館アジア太平洋大学学長。前・学校法人立命館副総長。日本を拠点に東南アジア・西アジアを中心とした社会開発問題に取り組む。専門分野は産業政策、環境科学、国土計画、都市工学、建築学と多岐にわたる。2013年より現職。

 山本氏は在学中、カセム教授の下、マレーシアにおける環境問題に関する実証研究、日本と英国での地域通貨の比較研究、他大学とのライフサイクルアセスメント手法の研究を通じて「一歩踏み出せば、道は開ける」という行動様式を学んだという。

 卒業後も一貫して「自身が納得し、誇りに思える社会との関わり方ができているか」「全身全霊を懸けたことを後悔しない仕事をしているか」と自問自答を繰り返し、収入が激減しても、自らの信じる事業に注力することを選んだ。カセム教授は「最先端の事業に取り組むのは孤独だが、耐える時期を乗り越えれば、ドミノ倒しのように道は開ける。諦めずにやり続ければ、いずれ社会がキャッチアップしてくる」とエールを贈る。不屈のチャレンジ精神、自ら道を切り拓いてゆく立命館の遺伝子は、卒業生の中に脈々と息づいている。

持続可能な、コミュニティ保全型農業の実現に取り組む

 山本氏が、イチゴ栽培による農村開発事業を行うタイ山間部農村。今も経済発展から取り残され、収入1日1ドル以下の人々が住む。山本氏は農業については門外漢ながら、植物生理と環境制御を学び、それを粗放農業しか行われていない地域に適用することで農業所得の改善ができるのではないかと発想し、AIHE(Agricultural Innovation for Humanity and Environment)プロジェクトを立ち上げた。2012年8月に(株)シードタイムを設立、採算事業化を目指す。現在NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のIT融合事業におけるスマートリーン農業事業の海外実証を担っている。

問い合わせ先

立命館大学入学センター TEL:075-465-8351 
大学ホームページ http://www.ritsumei.ac.jp/
入試情報サイト「リッツネット」http://ritsnet.ritsumei.jp
週刊ダイヤモンド2013年4月27日・5月4日合併号と同時掲載
提供/立命館大学
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