【第71回】 2009年03月27日
隈 研吾
自己顕示を抑制した「優雅な諦念」
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| 写真 加藤昌人 |
丹下健三、磯崎新、黒川紀章、安藤忠雄。日本を代表する建築家の系譜は、隈研吾の出現で流れを変えた。自己顕示という建築的欲望へのアンチテーゼと、工業的イメージから解き放たれた自由がそこにある。
「負ける建築」と呼ぶ。予算や建築条件などの制約をまずは受け入れ、街並みを醸成した自然と歴史に敬服し、思考を巡らせていく。敬愛する英文学者の吉田健一が言う「優雅な諦念」である。
バブル崩壊の傷跡を引きずった1990年代、フィールドを地方に移した。職人一人ひとりの顔が見えるプロジェクトの中で、ゆったりと流れる時間を確認した。2000年に完成した栃木の那珂川町馬頭広重美術館では、裏山の八溝杉でこしらえた格子を、壁に、屋根に配した。
足を踏み入れると、隙間から届く光に背中から抱かれているようで、心なしか呼吸が深くなる。「それまでリラックスは作品にはなりえなかった。ディテールを突き詰めることで、なしうることを実証した。それ自体、冒険だった」。
縦にまっすぐに伸びた格子は、02年に万里の長城の麓に造った「竹の家」、07年、東京ミッドタウンで生まれ変わったサントリー美術館でも存在感を示す。木、光、紙、水。「自然は生物である人間にとって、最も心地よい素材であるに決まっている」。
自己顕示を抑制した建築家の個性とは何か。「人間が共有する感覚に繊細であること、粘り強く探し出すこと。それが、才能なんじゃないかな」。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 遠藤典子)
隈 研吾(Kengo Kuma)●建築家 1954年生まれ。79年東京大学建築学科大学院修了。米コロンビア大学客員研究員を経て、90年隈研吾建築都市設計事務所設立。2001年より慶應義塾大学理工学部教授。「那珂川町馬頭広重美術館」の村野藤吾賞など受賞多数。現在、世界各国で60を超えるプロジェクトが進行中。主な著書に『負ける建築』(岩波書店)。
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