【第47回】 2008年08月27日
リチャード・タナー・パスカル
変革、敏捷性、複雑系

リチャード・タナー・パスカルは1980年代初めに世に知られるようになった。
ピーターズとウォータマンが『エクセレント・カンパニー』(In Search of Excellence、1982年)で企業の成功への道をとらえ直そうとしていた頃のことだ。
彼の『ジャパニーズ・マネジメント』(The Art of Japanese Management、アンソニー・エイソスとの共著)は、マッキンゼーの「7つのS」の効用を詳しく解説したもので、現在では古典的名著となっており、彼はその発表以降マネジメント思想の最前線に立っている。
人生と業績
パスカルは1938年生まれで、ハーバードビジネススクールで学んだ。1970年代後半には、ピーターズとウォータマンがマッキンゼーで着手していた「7つのS」の開発に深く関与する。スタンフォードビジネススクールの教授時代には、ホワイトハウスのアドバイザーや多数のフォーチュン500社クラスの企業のコンサルタントも歴任した。最近、オックスフォード大学テンプルトンカレッジの准特別研究員に就任した。
一時的なはやりすたりに批判的なパスカルは、彼の同世代の多数派と同じく、「グル」とか「エキスパート」といった称号でもてはやされたくないと考えている。このような肩書きは「答えをすべて知っているヒーロー」を連想させると彼は考えており、むしろ時に応じて常に質問を投げかけ続ける人物として知られたいと望んでいる。このためパスカルは、毎年何日間かは集中的にビジネスリーダーたちに質問し、彼らとのディスカッションから学ぶ時間を取っている。
思想のポイント
●ジャパニーズマネジメントと7つのS
探究心に駆られたパスカルとエイソスは、ウォータマンがマッキンゼーで企業の新しい成功モデルを模索していた1970年代後半に、ピーターズとウォータマンと接触するようになった。ピーターズとウォータマンはベストセラー『エクセレント・カンパニー』でアメリカ企業の成功例を引用したが、パスカルとエイソスは日本企業に教訓を求め、日本のやり方がアメリカ企業にどのように応用されているのかに着目した。
4人を結びつけたのは、ビジネスの変化のスピードが加速していることと、過去には十分事足りていた企業の情報システムが次第に不十分になってきたことであった。『エクセレント・カンパニー』も『ジャパニーズ・マネジメント』もともに7つのSの理論を解説したものだが、より深く掘り下げたのはパスカルとエイソスの方で、その理論の元をたどると、多くが日本企業、特に松下電器産業の業務慣行に端を発しているとした。
パスカルとエイソスは松下とITTを比較し、この2社はシステム、戦略、構造などの「ハードなS」では大きな違いはないが、スタッフ、スキル、共通の価値観などの「ソフトなS」に決定的な違いがあることを発見した。
7つのSは一般的に円かダイヤ型で表わされ、1980年代の前半には、Sという共通の頭文字による訴求効果も独創的だったが、それ以前には重要視されていなかった概念を並べた点でも目新しかった。
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