【第20回】 2008年09月18日
「スーパー記憶術」ってホントにあるの?
──上手な記憶方法とは
人間は、脳あってこその存在。人の行動、思考、感情、性格にみられる違いの数々は、すべて脳が決めているのです。「心の個性」それはすなわち「脳の個性」。私たちが日常で何気なく行なっていることはもちろん、「なぜだろう?」と思っている行動の中にも「脳」が大きく絡んでいることがあります。「脳」を知ることは、あなたの中にある「なぜ?」を知ることにもなるのです。この連載では、脳のトリビアともいえる意外な脳の姿を紹介していきます。
サルは「連想」で
記憶している
本屋に行けば、記憶力を高めるための本が並んでいます。それらの本によれば、著者独特の記憶術をマスターすれば記憶力が飛躍的に向上し、ときにはその記憶術によってむずかしい受験も容易に突破できると謳っています。さて、本当にそんな記憶術があるのでしょうか。
第18回でも紹介しましたが、記憶には大別して2つの種類があります。1つは自転車の乗り方を身体で覚える「手続きの記憶」、あるいは「技の記憶」であり、もう1つは言葉や図形を頭で覚える「陳述的記憶」です。
一般に記憶術といえば、英語の単語を丸ごと覚えたり、歴史の年代を記憶したりといったふうに解釈されています。もちろん、それらの記憶も陳述的記憶だといえるでしょう。
それも記憶には違いないし、それなりに役に立つことも確かではあります。こういう実利的な記憶も、またそうでない多様な陳述的記憶も、連想を利用すると身につきやすいものです。
記憶の方法として、自分の興味のある物ごとに結びつけるようにすると、容易に記憶できます。実際サルにコンピュータ・グラフィックスの映像をたくさん覚えさせ、見たことのあるものを知らせるようジュースでつって訓練させると、サルの脳の神経細胞は、訓練のときに続けて覚えた映像の2~3個に同じように反応します。つまり、1つの映像からの「連想」で残りのいくつかを思い出すのです。
この連想のネットワークが密であればあるほど、「頭がいい」とも言えるでしょう。1つひとつの出来事や知識を体系的に理解する力は、連想に根ざしているのです。我々もこれを利用しない手はありません。
「目的」と「集中力」
が記憶術のキーワード
現実の生活を考えると、記憶は理解力や判断力と切り離しては考えられません。
たとえば、ある人が仕事上で必要な専門用語を記憶しようとするとき、多くの場合、それは専門用語に興味があるから記憶しようとしているのではありません。仕事の上で必要だから記憶しよう、というはっきりとした目的があるからなのです。
身体で覚える「手続きの記憶」でも同じことがいえます。自転車の乗り方を覚えるときでも、自転車に乗りたい、あるいは自転車に乗る必要があるからこそ乗り方を覚え、身体で記憶しようとします。また、英語の単語を丸ごと覚えたり、歴史の年代を記憶するのも記憶には違いないし、そこにも「受験」という目的があります。
結局、目標を持って集中力を働かせ、連想を活用すること、これが記憶力アップにつながるといえるでしょう。
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著者プロフィール
- 山元大輔 [監修]
(東北大学大学院生命科学研究科教授/理学部生物学科教授)
1954年東京都生まれ。東京農工大学農学部卒業後、同大学院農学研究科修士課程終了。理学博士(北海道大学)。ノースウエスタン大学医学部博士研究員、三菱化学生命科学研究所室長を経て、1999年から早稲田大学人間科学部教授。同大学理工学部教授を経て、現在、東北大学大学院生命科学研究科教授。同大学理学部生物学科教授。
この連載について
人間は脳あってこその存在。行動、感情、性格の数々はすべて脳が決めています。「脳」を知ることは、あなたの中の「なぜ?」を知ること。当連載では、脳のトリビアともいえる、意外な脳の姿を紹介していきます。
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