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企業の法令知識不足が「育休切り」を増やしている

 育児休業の取得を理由に解雇する「育休切り」が問題になっている。ここ5年間、妊娠・出産や産休、育児休業等の取得等を理由とする不利益取扱いに関する労働者からの相談件数は増加傾向にある。とくに、昨年9月のリーマン・ショック以降、雇用情勢は急速に悪化。こうした中で、上記のような不利益取扱いがさらに増加することが懸念されている。

 「育休切り」は、昨年末に問題となった「派遣切り」の類似問題としてとらえられることが多い。だが、両者の法的な意味合いは異なる。妊産婦を解雇することが全て違法となるわけではないが、妊娠・出産や産休・育児休業等の取得を理由にして解雇することは禁止であると、法律に明記されている(*注)。その意味で、「育休切り」は違法行為である。にもかかわらず、「知らなかった」という事業主は少なくない。

 「事業主や末端の所属長の男女雇用機会均等法や育児・介護休業法に対する理解不足は否めない」と、厚生労働省職業家庭両立課 元木賀子氏は指摘する。企業内には「育休切り」に対して、「会社を休んで働かないのだから切ってしまってもいいのではないか」という意識でいる人もいるようだ。

 「大きな会社は中小零細企業と比べて、概して制度の整備は行き届いているといえます。が、会社規模が大きくなると管理職、労働者の数も多くなるので、法の浸透が難しい。仕事と育児の両立について、中間管理職層等の理解不足によって、『休業を認めない』とか『休業したら辞めてもらう』などと言ってしまうような事態が生じることがあります」(元木氏)

 実際のところ、法に対する理解がしっかりできていないケースとして、次のような例もあった。

 ある企業に、勤務の怠慢など、職務態度に著しく問題のある従業員がいた。が、解雇はせず、その後その従業員からの産休の申し出とともに解雇を言い渡した。最初に解雇しなかったことに対してその事業主は、「その従業員が傷つくから」と理由をあげた。確かに、営業成績が悪い、みんなから嫌われている、といった個人の属性に関することで解雇すると本人は傷つく。そこで、産休を理由にすれば言いやすいと思っていたという。このような、法に対する理解不足が思わぬ法令違反を招く。

 男女雇用機会均等法や育児・介護休業法などにより、女性が仕事を続けていくための環境整備は、昔と比べると進んだといえる。しかし、雇用情勢の悪化により、思わぬ「ほころび」が出始めている。今、このほころびをつくろうことが必要な時期に来ている。

(江口 陽子)


(*注)男女雇用機会均等法第9条第3項、育児・介護休業法第10条による。「育児休業に係る不利益取扱い」に関する労働者からの相談件数は、平成16年度が521件、平成20年度では1107件に倍増。(厚生労働省調べ)

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