【第4回】 2008年11月27日
「ウツ」を“心の風邪”と喩えることの落とし穴
――「うつ」にまつわる誤解 その(4)
なぜ「心の風邪」と
言われるの?
当連載も含めて、近年では「うつ」についての情報が様々なメディアを通じて頻繁に発信されるようになり、いまだ十分ではないにせよ、徐々に一般の方々に「うつ」が認知され始めてきています。そのような情報の中でかなり高い頻度でお目にかかる説明に、「うつは心の風邪です」という表現があります。
これは、人々の「うつ」に対する偏見や恐怖心を払拭し、早期発見と気軽な早期受診を促すキャッチコピーとして、かなり役立ってきているものでしょう。また、ことに精神論に傾きがちな日本の風潮に対して、このフレーズには「うつ」を身体的な病気に近いイメージで捉えてもらうための、啓蒙的な効果もあるものと思われます。
専門的なことですが、近年、有効性が高く副作用の少ないSSRIやSNRIと言われる新しい種類の抗うつ薬が登場したことで、薬物療法での治療効果がかなり期待できるものになりました。そういう背景もあって、この表現には「風邪の時に感冒薬で気軽に対処するように、『うつ』も気軽に治療を受けて、早目に治してしまいましょう」というメッセージも込められてもいるわけです。
また、「うつ」が「風邪」に喩えられた理由としては、かかる頻度の高い病気であるということや、甘く見てこじらせると重症化する危険があるためなのだろうと思われます。
しかしながら、もう一歩踏み込んで考えてみたときに、この「風邪」という比喩には、さまざまな誤解を生んでしまう一面もあることは否定できません。
本当に「心の風邪」なの?
――「実際うつにかかってみればわかると思うけど、『風邪』なんて甘いもんじゃない。毎日死にたい気持ちとの闘いなんだから!」
――「風邪だったら数日から1週間もあれば治るだろうけど、うつはどんなに早くたって治るのに数ヵ月以上はかかるよ」
「うつ」を実際に経験した患者さんたち生の声として、こういう意見もよく聞かれます。
また、実際に「うつ」の診療に従事している臨床医たちからは、
――「そんなに生易しい病気ではない」
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著者プロフィール
- 泉谷閑示
(精神科医)
1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部付属病院医員、(財)神経研究所付属晴和病院医員、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック院長。著書に『「普通がいい」という病』(講談社現代新書)と最新刊の『「私」を生きるための言葉』(研究社)がある。
「泉谷クリニック」ホームページ
この連載について
いまや8人に1人がかかっているといわれる現代病「うつ」。これだけ蔓延しているにもかかわらず、この病気に対する誤解はまだまだ多い。多数の患者と向き合ってきた精神科医が、その誤解を1つずつひも解いていく。
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