【第7回】 2009年01月15日
「昼夜逆転」現象のナゾ――なぜ「ウツ」の人は朝起きられなくなるのか?
――「うつ」にまつわる誤解 その(7)
「うつ」の状態になると、朝の起床が徐々に困難になってきます。そのため、次第に遅刻や出社不能などの問題も生じやすくなってきます。
第3回で「うつ」と遅刻の関係については詳しくとり上げましたが、今回はさらに、日中に寝てしまい夜中に起きている「昼夜逆転」の状態について考えてみましょう。
気づくと、
夕方に起きて明け方寝る生活に・・・
3ヵ月前から「うつ」で休職中のSさんは、奥さんと2人暮らしです。奥さんも会社勤めをしているので、平日の日中、Sさんは1人で家にいる生活です。
奥さんの協力もあって、朝はどうにか起こしてもらって、出社前の奥さんと一緒に朝食を摂るようにしており、日中も寝てしまわないように、近所の散歩や家の掃除や皿洗いなどをするよう自分で決めました。
会社の健康管理室の産業医や通院中のクリニックの主治医からも「自宅療養中は、なるべく規則正しい生活を心がけてください」と指導を受けていましたし、Sさん自身も、復職する時に生活リズムが乱れてしまっていては、戻るに戻れなくなるだろうと考えたからです。
はじめの1ヵ月くらいは、Sさんも自分で決めた通りの生活をどうにか頑張ったのですが、その後、徐々に気力が続かなくなり、日中の眠気やだるさも強まってきてしまい、朝は起こされても起きられず、日中もずっと寝てしまうような日が増えてきてしまったのです。
一方、日中に寝てしまったので、夜は処方されている睡眠剤を服用してもなかなか寝付くことができなくなっていきました。
Sさんは主治医にその旨を報告して、睡眠剤をこれまでよりも強力なものに調整してもらいましたが、足元がふらついたりはするものの、頭の芯だけは覚醒していて、やはりうまく眠れるようにはなりませんでした。
もともとは自分に厳しい性格のSさんでしたから、自分で決めたように療養生活を過ごせない自分は、もうすっかりダメな人間になってしまったように感じて強く自己嫌悪するようになりました。「このまま治らないんじゃないか」「そもそも俺はダメな人間だったんじゃないか」と考えるようにもなってきてしまいました。
症状にも“大切な働き”
があるのでは?
「うつ」の療養中にSさんのような「昼夜逆転」が起こることは、決して稀なことではありません。むしろ、そうならない場合の方が珍しいくらいだと言ってもよいでしょう。
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著者プロフィール
- 泉谷閑示
(精神科医)
1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部付属病院医員、(財)神経研究所付属晴和病院医員、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック院長。著書に『「普通がいい」という病』(講談社現代新書)と最新刊の『「私」を生きるための言葉』(研究社)がある。
「泉谷クリニック」ホームページ
この連載について
いまや8人に1人がかかっているといわれる現代病「うつ」。これだけ蔓延しているにもかかわらず、この病気に対する誤解はまだまだ多い。多数の患者と向き合ってきた精神科医が、その誤解を1つずつひも解いていく。
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