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8人に1人が苦しんでいる!「うつ」にまつわる24の誤解 泉谷閑示

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クスリに頼るのは悪いこと?――「抗うつ薬」の効用と限界

――「うつ」にまつわる誤解 その(10)

 「うつ」の治療において薬物療法が主流の今日ですが、クスリについて誤った認識を持っている方たちはまだまだ多いように思われます。周囲からの誤解や偏見もありますし、患者さん自身の間違った思い込みもあります。また、薬物療法はどんな状態に役立つのか、どんな場合には効果が期待できないのか、つまりその効用と限界について、大まかにでも知っておくことは大切なことです。

 多少専門的な話になってしまいますが、避けて通れない重要なことですので、今回はこのテーマについて触れてみたいと思います。

クスリに「頼っている」
という後ろめたさ

 「まだクスリに頼っているようでは、治ったとは言えないな」

 言葉にしてあからさまに言われるかどうかは別としても、周りからこんな見方をされてしまって窮屈な思いをしている方も、依然いらっしゃいます。また、患者さん自身でも、「クスリに頼ってしまっている」とある種の後ろめたさを感じている方が少なくありません。

 この「頼っている」という非難は、メンタル系のクスリにはどれも「依存性」があるという誤ったイメージを持っているところから来ているのではないかと思われます。

 「うつ」の治療で中心的に用いられる<抗うつ剤>には、通常、依存性はありません(以前、覚醒剤に分類されるリタリンという特殊な薬剤の安易な投与や乱用が問題になり、現在では処方が厳しく制限され、通常「うつ」に投与されることはなくなりましたが、これは例外的に依存性のあるものでした)。

 ですから、抗うつ剤に関して「頼っている」と捉えることは、完全に間違った認識だと言えるでしょう。むしろ、大部分の患者さんは「飲みたくはないけれど、少しでも良くなるように」と祈るような思いで、面倒でも服薬を続けているのです。

 しかし、もし患者さん自身が、クスリの使用に何らかのためらいや後ろめたさを持っている場合には、「クスリに頼っている」のではなく、「クスリを活用している」のだと捉え直していただくことが必要になります。

 クスリは、必要な時にはきちんと用いることが大切で、その後状態が改善するに従って減薬され、あるところから先は必要性がなくなるものです。クスリを活用することが望ましい状態なのに、ためらって医師の処方とは違った中途半端な服薬をしてしまいますと、かえって経過を長引かせてしまうことにもなりかねません。

抗うつ剤を飲んだら
眠くなったのは副作用か?

 「抗うつ剤を処方されて飲んだけど、すぐに眠気がひどく出たので、自分には合わないと思って飲むのを止めました」

 薬物療法開始時に、このような理由で服薬を中止される方がいます。しかしこれは、副作用が出て薬を中止したのだから適切な判断だった、とは言えないところがあるのです。

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著者プロフィール

泉谷閑示
(精神科医)

1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部付属病院医員、(財)神経研究所付属晴和病院医員、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック院長。著書に『「普通がいい」という病』(講談社現代新書)と最新刊の『「私」を生きるための言葉』(研究社)がある。
「泉谷クリニック」ホームページ

この連載について

いまや8人に1人がかかっているといわれる現代病「うつ」。これだけ蔓延しているにもかかわらず、この病気に対する誤解はまだまだ多い。多数の患者と向き合ってきた精神科医が、その誤解を1つずつひも解いていく。

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