【第12回】 2009年03月26日
「ウツ」になりやすいタイプに“異変”も
――「ウツ」と「性格」の関係とは?
――「うつ」にまつわる誤解 その(12)
「うつ」の状態が起こる要因の1つとして、もともとの性格がどうであったのかという問題があります。このように病気が生まれる土壌となる性格を専門的には、「病前性格」と呼びます。
今回は、「うつ」に陥りやすい性格とはどんなものなのか、また、そのような性格は変えることができるのか、というテーマについて考えてみたいと思います。
「何事も正確に、綿密に・・・」
勤勉で善良なタイプの人が危ない!
古典的なタイプのうつ病や躁うつ病(第5回参照)については、古くから病前性格についての議論がなされてきましたが、特に代表的な説として「メランコリー親和型性格」と「執着気質」があります。
1961年にドイツの精神病理学者テレンバッハが提唱した「メランコリー親和型性格」というものは、次のような特徴をもつ性格を指しています。
☆作業に正確さを求める
☆綿密
☆勤勉
◆良心的
◆責任感が強い
◆対人関係では衝突を避け、他人に尽くそうとする
これらは、いずれも「秩序を重んじる」という点で共通しています。
これらの内容は、大きく2種類に分類できることがわかります。つまり、1つは作業をどう行なうかという「作業遂行上の秩序」で、もう1つは道徳・責任・人間関係などに関する「社会的な秩序」です。先ほどの項目で言えば、ちょうど上の3つと下の3つがそれぞれに相当します。
「作業遂行上の秩序」は対象が「作業」ですから、時間と労力を必要なだけ充分にかけさえすれば、その高い要求水準を達成できるかもしれません。しかし、仕事や学業などにおいてはたいていの場合、外部からの制約が課せられてしまうものでしょう。つまり、締め切りで時間が限定されるでしょうし、作業量も自分の都合で勝手に減らすわけにはいきません。
そのうえ「メランコリー親和型性格」の人は、性分として「正確に」「綿密に」行なわないと気がすまないわけですから、作業量は実質的には課せられたものの何倍にもふくれ上がってしまいます。
このようにして過度な負荷がかかり、ついには達成不可能な状況にまで陥ってしまうと、「頭」の過度な要求にたまりかねた「心」(=「身体」)がブレーカーを落とすことになってしまいます(第1回参照)。これが「うつ状態」です。
「自分に鞭を打ち、衝突を避ける・・・」
責任感が強く良心的な人が陥りやすいワナ
ここに、もう1つの「社会的な秩序」を重んじる傾向も加えて考えてみましょう。
責任感が強く、良心的に業務を遂行すべきだと考える性格ですから、手抜きや期限を破るようなことを自分に許しません。たとえ作業量が多過ぎても異議を唱えたりすることなく、自分に厳しく鞭打って、睡眠時間を削ったりしてやり通そうとします。
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著者プロフィール
- 泉谷閑示
(精神科医)
1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部付属病院医員、(財)神経研究所付属晴和病院医員、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック院長。著書に『「普通がいい」という病』(講談社現代新書)と最新刊の『「私」を生きるための言葉』(研究社)がある。
「泉谷クリニック」ホームページ
この連載について
いまや8人に1人がかかっているといわれる現代病「うつ」。これだけ蔓延しているにもかかわらず、この病気に対する誤解はまだまだ多い。多数の患者と向き合ってきた精神科医が、その誤解を1つずつひも解いていく。
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