【第27回】 2008年05月07日
娘の就活が終わった
娘は金融機関B社から4月4日に内々定を受けた。しかし、祖母が大きな手術を受けて私と妻が介護に取り組む様子を見て、関西で働ける会社も考えた方がいいと思い就活を続けていた。何が何でも地元というよりも、後悔しないためにも廻っておきたい気持ちもあったようだ。
4月16日に、倉庫会社D社から内々定の連絡が来て、同じ日に、エネルギーのC社から最終面接の連絡が来た。D社は4月21日に来てほしいとのことだった。
C社は、同じ大学の知人が4日前に最終面接に進んだ話を聞いていたので、もう落ちたと思い込んでいた。私が採用責任者だった時も「ペンディング」と言って、人数調整や状況を見極めるために、しばらく合否を保留することがあった。
昨日までは金融機関B社に決めていたが、2社からの内々定と最終面接の連絡を受けて再び気持ちが揺らいだ。
■4月18日
エネルギーC社の最終面接は、娘1人対して人事部長を含む3人が面接者だった。質問の中心は「学生時代に打ち込んだこと」で、娘は演劇サークルの話をした。また「自分の欠点を2つ挙げてください」と質問を受けた。まず「根を詰めすぎることです」と答えたが、もう1つがすぐには頭に浮ばなかった。面接官が「1つでもいいですよ」と助け舟を出してくれた時、「このように生真面目過ぎるところです」と返して、皆が笑って場が和んだ。
「現場で作業服を着たおじさんと仕事をすることもありますが、どうですか?」には、「年配の人と話すのは勉強になるので大丈夫です」と答えた。スムーズに話は流れたが、強い手ごたえがあった訳でもなかった。「どうかなぁ」と思いながら、30分少しの面接を終えた。
その日の夜、C社の人事担当者から「楠木さんには、当社に来てもらいたいと考えています」と内々定の連絡が来た。C社は、リクルーター制ではないので、毎回人事担当者から電話が来る。B社リクルーターの勢いある話し方とは対照的である。
■4月21日
内々定を辞退するため倉庫会社D社を訪問。娘は、以前にB社からの内々定の話もしていたので、気分的には楽だった。先方は最終の意思確認をしたい趣旨だった。
D社は、採用面接でも、形にこだわらず、驚くほどざっくばらんな話しぶりで、これなら日常の仕事も自然体で取組めると感じられた。B社の先輩のように、ぐいぐい引っ張る雰囲気は全くなかった。必ずしも地元で働ける会社ではなかったが、社会を支えるインフラの仕事に興味があったし、「こういう雰囲気の会社だったら働きたい」と娘は評価していた。
自分の気持ちを率直に話して内々定を辞退すると、人事の役職者は「そう決めたのなら応援します。がんばってください」、担当者は「楠木さんなら、どの会社でもやっていけるでしょう」と声をかけてくれた。最後まで肩に力が入らず、自然に応対してくれた2人に感謝すると同時に、彼らの言葉に自信を持ったようだ。
娘からその話を聞いて「簡単でいいからお礼の手紙を出したらいいよ」と声をかけた。
■4月23日
娘は、ここ2日間迷った末に、金融機関B社ではなくて、エネルギーC社に決めた。
その際の会話である。
母「裕美は、どういうことで迷っているの?」
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著者プロフィール
- 楠木新
(「こころの定年」評論家)
大手金融機関勤務のかたわら、企業など組織を離れて「いい顔」で活躍している中高年に対するインタビューを重ねている。2007年3月より朝日新聞be(土曜版)でコラム「こころの定年」を連載中。著書に『ビジネスマン「うつ」からの脱出』(創元社刊)がある。
この連載について
働く価値観が多様化する中、超売り手市場の環境下で、大学生はどのように企業選択をしていくのか。就職活動に臨む大学3年生の娘と父とのリアルな対話を通して、実状に迫る。
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