【第111回】 2010年02月05日
それでもボルカールールは必要
「大き過ぎて潰せない」まま放置より良策だ
オバマ米大統領が1月21日の記者会見で法制化の方針を表明した「ボルカールール」(金融機関に対する新たな規制)が世界的な批判の対象になっている。
大統領の発表によると、ボルカールールは、(1)金融機関によるリスクの高い投資の禁止、(2)借り入れをテコにした規模拡大の抑制――の2つが柱だ。
これに対して、欧米では、経済界を中心に、オバマ大統領の動機が「高額報酬を復活した銀行を叩くことによって、低下した政権の支持率の回復を目指す政治的なもので不純だ」といった見方が根強く、中身については「(一連の)金融・経済危機の原因と無関係な規制」であり、これが実現すると「(足取りが覚束ない)米経済の回復の足を引っ張りかねない」という批判が後を絶たないのだ。
米議会で、こうした規制強化の法制化が容易でないのも事実だろう。筆者も、ボルカールールが最善の方策だとは思わない。
しかし、ボルカールールを政治的なポピュリズムの産物とみなすのは間違いである。現状は、危機以前にも増して、「大き過ぎて潰せない」金融機関が無謀な投資を繰り返し、再び、尻拭いのために米国民の血税が投入されるリスクが高まっていると考えるべきだ。こうした事態を繰り返さないために、ボルカールール的な規制の導入は避けて通れない道なのではないだろうか。
「2年あまりの間に、700万人を超す人々が職を追われた」「今回の経済危機は金融危機として始まった。それは、銀行や金融機関が、手早く利益と巨額のボーナスを得ようとして、巨大で向こう見ずなリスクを犯したときのことだった」――。
公式のトランスクリプトを読むと、オバマ大統領は1月21日にホワイトハウスで開いた記者会見の席で、今回の金融・経済危機のつめ跡の深さを強調した。今回の危機を、1929年の大恐慌に匹敵する、「第2の大恐慌」と例える場面もあった。そして、大統領は、こうした金融・経済危機を引き起こした原因が、銀行や金融機関の放漫経営にあったと断定した。
そのうえで、「『大き過ぎて潰せない』銀行によって、米国の納税者が人質にされる事態は2度と起こさない」と語り、このような危機を2度と招かないために、今回の金融機関に対する規制であるボルカールールの法制化が必要だと強調した。
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著者プロフィール
- 町田徹
(ジャーナリスト)
1960年大阪府生まれ。神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒。日本経済新聞社に入社後、記者としてリクルート事件など数々のスクープを連発。日経時代に米ペンシルバニア大学ウォートンスクールに社費留学。同社を退社後、雑誌「選択」編集者を経て独立。日興コーディアルグループの粉飾決算をスクープして、06年度の「雑誌ジャーナリズム賞 大賞」を受賞。「日本郵政-解き放たれた「巨人」「巨大独占NTTの宿罪」など著書多数。
この連載について
硬骨の経済ジャーナリスト・町田徹が、経済界の暗部や事件を鋭く斬る週刊コラム。独自の取材網を駆使したスクープ記事に期待!
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