ダイヤモンド社の雑誌

野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

このページを印刷

バックナンバー一覧

経済危機の回復から取り残される日本、
最大の原因は製造業が抱える深刻な後遺症

 前回、日本の製造業の利益の落ち込みが激しいことを述べた。経済危機による利益の落ち込みは全産業で見られた現象であるが、製造業がとくに大きな影響を受けたのである。

 法人企業統計の速報値を用いて、四半期の経常利益(季節調整済み)を見ると、【図表1】のとおりだ。非製造業は、2007年頃に8兆円程度だったものが6兆円程度に落ち込んだに過ぎないのに対して、製造業は7兆円程度であったものが、1兆円程度にまで減少している。

 ところで、四半期の売上高(季節調整済み)を見ると、【図表2】に示すように、非製造業も製造業も、07年頃に比べて2割程度減少しており、大きな違いはない。「売上高は製造業も非製造業も同じような率で落ちたにもかかわらず、利益の落ち込みは製造業がはるかに激しい」というのが、重要な点である。非製造業では売上の減少にほぼ比例して利益が落ちたのに対して、製造業では売上の減少率に比べて利益の減少率が大きいのだ。

なぜ製造業の利益の落ち込みが激しいのか?

 以上で見たのは利益の額であるが、粗利益と営業利益の売上高に対する比率について、製造業と非製造業を比較してみよう(【図表3】参照)。

 非製造業においては、粗利益の売上に対する比率は、経済危機のなかでむしろ上昇しているのである。これに対して、製造業においては、粗利益の売上に対する比率は、経済危機によって急激に下落している。前回述べたように、これが営業利益率を低下させた主要な要因だ。つまり、非製造業は、売上減に対して売上原価を比較的容易に調整できるのに対して、製造業はそうした調整が難しいということだ。

おすすめ関連記事

ソーシャルブックマークへ投稿: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をYahoo!ブックマークに投稿 この記事をBuzzurlに投稿 この記事をトピックイットに投稿 この記事をlivedoorクリップに投稿 この記事をnewsingに投稿 この記事をdel.icio.usに投稿

Special Topics

バックナンバー

第63回
「円高こそデフレの原因」説の怪しさ ──今こそ必要なデフレの経済学(6) (2010年03月20日)
第62回
総需要の減少をもたらした2つの要因 ──今こそ必要なデフレの経済学(5) (2010年03月13日)
第61回
デフレに関する典型的な3つの誤解 ──今こそ必要なデフレの経済学(4) (2010年03月06日)
第60回
総需要の激減に対して金融政策は無意味 ──今こそ必要なデフレの経済学(3) (2010年02月27日)
第59回
日本でのみ需要が増えず物価が下がる理由──今こそ必要なデフレの経済学(2) (2010年02月20日)
第58回
金融緩和してもデフレは克服できない ──今こそ必要なデフレの経済学(1) (2010年02月13日)

バックナンバー一覧

Pick Up

野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

「円高こそデフレの原因」説の怪しさ ──今こそ必要なデフレの経済学(6)

「円高はデフレを加速するので問題だ」と言われることがある。は‥

経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”

人民元切り上げ拒む中国のエゴに、 日本政府はしたたかで賢い対応を

今年の中国全人代は、世界第2位の経済大国の座を目前にしながら‥

格差社会の中心で友愛を叫ぶ

“勝ち組”の足元にも死の落とし穴!? 自殺大国ニッポンで男たちが死に急ぐワケ

約16分にひとり。今、日本ではこんなハイペースで自殺が起きて‥

ツイッター+αのつぶやき企業戦略

特別対談!津田大介vs本荘修二(上) ツイッターで伸びる会社、沈む会社

世間とリアルタイムに結びついているツイッターは、使い方次第で‥

新着トピックス

野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
「円高こそデフレの原因」説の怪しさ ──今こそ必要なデフレの経済学(6)
日本を元気にする企業の条件
ホンダ、ヤマハ発、味の素、住友化学… 日本企業にもあるBOP市場開拓のネタ
『週刊ダイヤモンド』特別レポート
市民による市長リコールもまだできない 阿久根市政“大混乱”の責任は誰にある?
inside
全国で唯一の「コンドーム販売規制」 長崎県の少年保護育成条例改正が紛糾
News&Analysis
苦境の地方空港に追い討ちも? 火種くすぶる「ハブ空港」議論の真実
岸博幸のクリエイティブ国富論
日本のためにならない「FREE」礼賛論を疑え!
追跡!AtoZ ~いま一番知りたいテーマを追う!超リアルドキュメント
大ヒット商品が続々「特許切れ」へ。 2010年以降、もう「新薬」は生まれない!?
チャンスを逃さない! 今どき「住活」事情 By SUUMO(スーモ)
エコポイントがなくても人気は絶大? 想像以上に盛り上がる「エコ住宅」ブーム
働き盛りのビジネスマンを襲う 本当に怖い病気
手足のひび割れと関節痛が同時に!? 骨の変形をも引き起こす皮膚病の正体
inside
大手マンション会社も注視する「シェアハウス」の“選択基準”
「超都心」にアツい視線!
2009マンション人気ランキング発表。NO.1物件は?

最新の連載一覧

すべての連載

特集を見る

Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます

公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略
“不況に強い”にも関わらず売上急減!? 医薬品業界を襲う「2010年問題」とIFRS
短答直入
大幅人員削減で業績改善へ 売上高3兆円計画は達成可能 住友電気工業社長 松本正義
金融市場異論百出
超インフレ国はジンバブエのみ 世界が学んだ「最低限の規律」
週刊ダイヤモンド 企業特集
ユニー 前村哲路社長インタビュー 「現場の自由裁量権を広げ 個店経営のウエートを高める」
『社会貢献』を買う人たち
キレイになって、途上国を支援! 女性の飽くなき「美への探求」が生んだ、一石二鳥のビジネスモデル
起業人
地方に埋もれたうまい食材を発掘し 築地市場に乗り込んだ風雲児 食文化社長 萩原章史
山崎元のマネー経済の歩き方
対等合併の呪
岡野工業・岡野代表エッセイ
“神の手をもつ男”岡野雅行氏が日本の物づくりに「常識を捨て去れ」と喝!
DOL編集部のツイッターを開始
最新記事の話題から編集部の日常まで、24時間つぶやきます。フォローよろしくお願いします。

著者プロフィール

野口悠紀雄
(早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授)

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『「超」整理法』シリーズ、『資本開国論』『モノづくり幻想が日本経済をダメにする』等がある。 野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』

この連載について

突如として世界中を襲った経済危機。激流に翻弄される日本経済はどうなってしまうのか? なすべき対策はあるのか? 100年に1度の未曾有の事態を冷静に分析し、処方箋を提示する野口悠紀雄の緊急連載!

野口教授が緊急提言!「未曾有の経済危機 克服の処方箋―国、企業、個人がなすべきこと」

【緊急出版!】この危機は、国にとっても個人にとっても真の改革を実現する最後のチャンス! 世界を襲った戦後最大の経済危機。その本質は、相互依存的に膨張した日本の「円安バブル」、アメリカの「住宅バブル」、中国の「改革開放バブル」の連鎖崩壊だった! 1680円(税込)

Recommend 話題の記事

週刊・上杉隆
元秘書として鳩山邦夫氏に苦言を呈す 信念の見えない離党に意味はあるのか?
China Report 中国は今
優秀な中国人学生を採用できなくなった日本企業
IFRS最前線
「のれん償却廃止」で利益が乱高下!? IFRSで変わるM&A戦略の行方
田中秀征 政権ウォッチ
鳩山首相「発言のブレ」正当化に疑問を呈す
News&Analysis
日本が望みを託す宇宙開発の切り札! 「宇宙エレベーター」の知られざるシナリオ
山崎元のマルチスコープ
官民一体の海外ビジネス受注期待を怪しむ
エコカー大戦争!
ハイブリット車は主力製品にならない! 車文化を食い潰した日本には真似できない 欧州自動車メーカーの腹のくくり方
ミドルマネジャーのための「不機嫌な職場」改革講座
この閉塞感はどうにもならないのか? 組織の成果を最大化する人事制度とは
SPORTS セカンド・オピニオン
大リーグ球団にとっての、日本人選手の価値を考える
政局LIVEアナリティクス 上久保誠人
参院選がどう転んでも、 政界の「世代交代」加速は止められない

雑誌定期購読のご案内


詳しくはこちら

特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。


詳しくはこちら

1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。


詳しくはこちら

年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。


詳しくはこちら

偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。

お知らせ・ご案内

会員専用ページ開始のお知らせ
7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。