石油ムラ 大異変#5Photo:kyodonews

旧村上ファンド系の投資会社に追い詰められる“危機”に直面していた石油元売り業界3位のコスモエネルギーホールディングス(HD)は、旧村上ファンドからコスモエネルギーHD株を取得した岩谷産業の持ち分法適用会社となった。岩谷産業は、同社悲願の水素戦略でのコスモエネルギーHDとの提携強化を狙う。だが、このディールは、元売り3社体制がほぼ固まっている保守的な「石油ムラ」の住人たちにとっては極めてショッキングな出来事だったようだ。特集『石油ムラ 大異変』(全5回)の最終回では石油ムラの最新序列などを解説する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

岩谷産業がコスモ株20%超
4月には資本業務提携も発表

 業界関係者を「あっ」と驚かせたディールの余韻は今も続いている。

 岩谷産業は2023年12月、石油元売り業界3位のコスモエネルギーホールディングス(HD)の株式約1740万株を旧村上ファンド系の投資会社側から取得し筆頭株主となった。岩谷産業は既に保有していた株とさらなる追加取得分を含め、今年3月までに議決権ベースで20%超保有することになり、コスモエネルギーHDを持ち分法適用会社とした。

 続いて4月には資本業務提携を発表。22年に両社は水素事業での協業検討に関する基本合意書を締結していたが、水素や再生可能エネルギーの分野でさらに連携を深めていく。コスモエネルギーHDが保有するガソリンスタンド網を活用した水素ステーションの整備拡大などがその内容だ。

 LP(液化石油)ガス業界首位、そして水素の雄である岩谷産業の23年3月期の売上高は9063億円、純利益は320億円。一方、石油元売り業界3位のコスモエネルギーHDの同期売上高は2兆7919億円、純利益679億円。まさに「小が大をのみ込む」ディールだった。

 石油の上流開発や石油製品を扱う「石油ムラ」の住人たちにとって、序列逆転は20年ぶりともいえるショッキングな出来事だった。どういうことか。次ページでは、石油ムラの最新序列を明らかにする。コスモエネルギーHDと岩谷産業のタッグが目指す方向性とは。