日本最大級の食品メーカー「味の素」。その名を知らない人はいないだろう。そんな味の素は近年企業としても急成長を見せ、まさに日本を牽引する大企業になっている。しかし、そんな味の素も常に順風満帆だったわけではない。数年前までは株価、PBRともに停滞し、企業として危機に瀕していた。そんな味の素がなぜ生まれ変わったのか、「味の素大変革」の立役者である味の素・元代表取締役副社長の福士博司氏による企業変革の教科書会社を変えるということ』がこの春発刊された。本記事では意識改革を基盤に会社の株価、PBRなどを3年で数倍にした福士氏の考え方を本文から抜粋・再編集するかたちでお届けする。

ビジネスパーソンの面談Photo: Adobe Stock

「君はどんな目標を持っている?」といきなり聞くのはNG

 社員とのキャリア面接の際に自分に課していたルールが1つだけあります。それは、自分の目標を先に伝えてから社員に目標を語りかけることです。

 よく聞く話として、キャリア面接の際に、「〇〇さんはどんな目標を持っているの?」と最初に質問してしまうことがあるかと思います。

 社員の気持ちを尊重しているように感じるかもしれませんが、聞かれた社員は実は困っている場合がほとんどです。なぜなら、質問があまりにも漠然としすぎていて、どんなことを答えればいいかわからない上に、いきなり自分から腹を見せなければいけないことを強要されるからです。

 上司の考えがわからないなかで、キャリアについて語れと言われても、思っていることをそのまま伝えるのは非常に難しく、大抵の場合は、「少しでも会社に貢献できるよう頑張ります」と、それっぽい目標を言うのみで終わってしまいます。

 ですから、そこで必要になるのは、面接をするリーダーやマネージャーから先に自分の目標を語ることなのです。まずは自分から目標を明かすことによって、相手も自分に対して真剣に目標を語ってくれるようになります。私の場合は次のように宣言してからキャリア面接を始めていました。

「私は、単なる技術系で終わるのでは満足できない。必ず経営者になって味の素を変える。それが私の目標だ」

 下手をすると、この人は、野心の塊と思われることになっていたかもしれません。しかし、社員たちは上司のキャリア目標とその実現に対する努力に敬意を表してくれて、自分も目標に対して努力すると、胸を張って言ってくれるようになったのです。こうして、私は夢や目標を持ち、それを正直に語れる組織をつくることができました。