「夢追う夫を支える献身的な妻」
その思い込みがキャリア形成を阻害

夫婦ともにキャリアを築ける人は何が違うのか最近では当たり前になりつつある共働き。しかし互いのキャリアについて相談できている夫婦は多くありません

前回の記事の最後に、「キャリア形成における夫婦の役割分担」「自分のキャリアイメージとパートナーのキャリアイメージの両方を相互に共有すること」の大切さについて言及しました。

 今回は、その点について深堀りしていきたいと思います。ファミリーキャリア・デザインのすすめです。

 キャリア形成をする上で、最も大切な役割を果たすのは実は家族です。自立前は両親や教師の影響が大きいでしょうし、就職してからは会社の上司や先輩の影響も大きいでしょう。しかし、家庭を持ってからはやはりパートナーの影響が最も強いと考えられます。

 もちろん、お子さんがいる方は子どもの影響も小さくはないのですが(後に述べます)、第一にスポットを当てたいのはやはりパートナーの影響です。

 “影響”という以上、良い影響も悪い影響も考えられますが、まずはプラスの影響について考えてみましょう。

 キャリア形成上のプラスの影響としては、妻からすれば子育てを共有してくれるとか、夫からすれば転勤転職に嫌がらずについてきてくれるとかといった、通常語られる物理的なサポートもありますし、さらには、「心が折れそうなときに話を聞いてくれる」とか、「心から応援してくれる」といった精神的なサポートも重要です。物心両面にわたる支えこそ、最も大切なプラスの影響と言えるでしょう。

 もちろん、パートナーの実家が経営する会社の幹部として活躍する、一流の芸術家であるパートナーのマネジャーとして辣腕を振るうなど、もっと直接的なプラスの影響も考えられるのですが、そういったいわば他律的なキャリア形成ではなく、自らの自律的なキャリア形成を前提にするとしても、パートナーの支えこそが、自らのキャリアにとって最大のプラス要因であるべきだと思います。

 自分がキャリアをさらに充実させたいと思った時、最後に味方になってくれるのは家族です。たとえ100人が反対しても、パートナーが積極的に支えてくれるなら、挫けず前に進めるものです。

 一般に、こうした話をすると、多くの人が念頭に思い浮かべるのが、「夢を追いかける夫を支える献身的な妻」といったイメージなのですが、この思い込みを排除することが大切です。社会的に固定化された男女の役割分担を「ジェンダーロール」と言いますが、私は、あまりに固定化されたジェンダーロールが多くの家族にとってキャリア形成上、最大の阻害要因かもしれないと思っています。

片方がチャレンジの時期は
もう片方がサポートに回る

前回の話題を少しだけ振り返ってみましょう。質問を寄せていただいた彼女は現在、子育てに専念するために、一時的に少し不本意な仕事上の立場を強いられているようです。処遇的には恵まれていますし、キャリアダウンになっているわけでもないので、側から見れば恵まれているほうだとは思うのですが、残念ながらキャリアアップにはつながっておらず、キャリアステイの状況で本人としては焦りの気持ちが募っていました。

 パートナーのことについては言及されていなかったので想像するしかありません。それ相応に家事や育児の手伝いはされていると思いますが、パートナー(多分男性でしょう)自身のキャリアにダメージはなく、順調にキャリアアップの途上にあるのではないかと思われます。私のアドバイスは、子どもが小さくてよりお母さんの存在が大切であり、かつ、今の本人の職場が育児にも好適であるなら、しばらくはこのままの状態を続ける、というものでした。

 さて、次の段階はどうすべきでしょうか。