残業ゼロ、有給休暇の強制取得…
人事部の「強要」で何が起こるか?

 その典型的な例は、企業の早帰りキャンペーンではないだろうか。「ノー残業デー」や、「早帰り日」を設定している会社は増えている。また、働き方改革が叫ばれる中、残業圧縮にフォーカスしている人事部も多い。中には、20時になったら消灯するとか、冷暖房を停止するといった、“荒業”を繰り出す人事部や総務部も散見される。読者の方々も、例えば、「20時になると消灯しますから、一斉に帰ってください…」などといった掛け声を聞いたり、メールを受信したことのある人も結構いるのではないか。

 有無を言わせない一律の早帰りキャンペーンに人事部が一生懸命になるがあまり、顧客からの問い合わせがあろうが、仕事が残っていようが、消灯までしてビジネスを停止させるというのだ。これでは結果的に、企業のミッションに反した事態になってしまうではないか。中には、早帰り日は家に仕事を持ち帰る、会社近くの社員の部屋に集まって仕事をするなどという本末転倒な事態まで起きているのだ。

 厚生労働省告示「労働時間の延長の限度等に関する基準」は、1週間15時間、1ヵ月45時間、1年間360時間などの残業時間の限度を定めている。これを厳格に運用するあまり、社員が人事部から、「○○さんは、今月は残業できません」「これ以上残業した場合は法令違反により罰せられます」と脅される事態も生じている。

 法律をよく読み込んでみると、実は、突発的な事態など特別な事情がある場合は、例えば、一時的に基準を超えて残業することなどが許容されている。にもかかわらず、一律的な運用に終始してしまっている人事部が実に多い。

 また、有給休暇の強制取得も、同種の運動だ。この件の労働基準法改正が実現されれば、有給休暇付与日数が年間10日以上の場合に、取得日数が5日未満の場合に、5日分までは取得日を会社が指定して、取得を義務化しようとするものだ。「○○さんは、本年度の有給休暇取得日数が2日です。○月○日から○日まで3日休んでください」という通知が来る事態が容易に想定される。ビジネス展開を本来目的としたビジネスパーソンが、ビジネスをしないことを強制される事態が到来するのだ。

「筆者は深夜まで残業しろといっているのか!」「残業制限を撤廃しろといっているのか!」「有給休暇を取得するなといっているのか!」という声が聞こえてきそうだが、そうではない。例外を認めず、一律に規制することが問題で、一律な規制の厳格な運用そのものが、ビジネスの本来目的を損なうということを言いたいのだ。