聞いたところ、ジブリの過去の大ヒットアニメは、子どもから高齢者まで幅広い層が見たのに対して、「君の名は。」の場合は10代から30代の層が何度も映画館に足を運んでいるそうです。この世代がもっともスマホを使っていることを考えると、「君の名は。」の大ヒットは、もしかしたら情報を受け身で流し読みするのに慣れ、またテキストの読み方が気楽で快適な“浅い読み”ばかりになったという世の中の変化を反映しているとも言えるのではないでしょうか。

 繰り返しになりますが、もちろん、だからといって「君の名は。」に因縁をつける気はまったくありません。むしろ、デビュー当時の新海監督を知る者として、デビュー作の「ほしのこえ」から15年かかって目標としていたジブリに並ぶところまで辿り着いたこと、その間まったくブレずに独自の世界観を貫き通した(「ほしのこえ」と「君の名は。」を比べればよく分かります)ことなど、心から賞賛すべき作品であると心底思っています。

 ただ、もし「君の名は。」の大ヒットの一因として、スマホやネットの使い過ぎで多くの人の思考や行動が受け身になり、また“浅い読み”ばかりになっているとしたら、この部分はかなり深刻に憂慮しなければなりません。

 なぜなら、今の日本経済の課題はもっとイノベーションを生み出して生産性を上げることですが、イノベーションの創出のためには、個々人がもっとクリエイティブになる必要があり、そのためにはもっと能動的に問題意識を持って様々な経験を積むなど、“深い読み”を通じて新たな知識を自分の知識・経験と融合させて新たな知見を生み出す、といった行為が不可欠だからです。

この二作品は関心ないおじさん世代こそ見るべき

 以上グダグダと書いてきましたが、それでも「シン・ゴジラ」と「君の名は。」の両方が素晴らしい映画であることには間違いありません。おじさん世代にはまだご覧になっていない方も多いと思いますので、ぜひ両方とも見て、映画自体の素晴らしさを感じるとともに、そこから日本の論点を考えてみるのも面白いのではないでしょうか。