パート主婦の本音は理解できる。しかし、今後の制度改正を見据えると、早い段階で「壁」を越えてしまったほうがいいのである。仮に数年の間、ソンをすることになったとしても、越えるべき。

 なぜなら、今後「106万円の壁」の対象企業は拡大、年収の壁はさらに引き下げられるのが十分予想できるからだ。少子高齢化や医療費の高額化が進み、年金や医療保険の財政はきびしいのが現実だ。国にしてみると、保険料を負担せずに社会保険に加入できる「第3号被保険者」や「被扶養者」はお荷物というのが本音だろう。今回の社会保険の適用拡大は、第3号や被扶養者の撤廃に向けての受け皿となる制度改正の「第一歩」といえる。

 こうした話を就業調整するパート主婦にすると「もっと年収の壁の金額が引き下げられたら、その時に壁を越えるつもり」と言う。それでは遅いと思う。

 たとえば、年金の「第3号保険者」と、健康保険の「被扶養者」の制度が廃止され、働いても働いていなくても自ら保険料を払うような制度改正が行われたら、収入の壁を気にせずにたくさん働きたい人が急増するだろう。

 そのときに、たくさん働きたい人全員が希望を叶えられるわけではない。人を選び、勤務時間を決めるのは、勤務先の上長である。では、上長に「選ばれる人」はどんな人か。

 私がその立場なら、日頃から熱心に働き(これは当たり前)、年末の繁忙期で人繰りが厳しいときにも就業調整せずに働いてくれている人を優先してシフトを組みたい。「選ばれる人」になるには、時間をかけた準備が必要なのである。

 コンサルティングに訪れたご夫婦にこの話をすると、夫は「その通りだ」と大きくうなずく。男性は人を使う側の視点で考えるから、「選ばれるパートになるため、短期的にソンしても、将来のトクを取るべき」という私の考えに同意し、妻に向かって「がんばってもう少し働いてみたら」と言う。

 妻にしてみると「たくさん働くなと言っていたくせに」と思うようだが(そういう顔をしている)、夫はそんなことを言ったことはすっかり忘れている。子どもの成長とともに教育費負担は増している上、管理職になっても思ったほど給料は上がらない。実は、妻が収入を増やしてくれるのは、願ってもないことなのだ(自分からは頼めない)。