1kg3500円も!イタリア野菜で山形の田舎町が起死回生かほくイタリア野菜。現在では約45種類が生産されている

 日本有数のイタリア野菜の産地と聞いて、どこを思い浮かべるだろうか。鎌倉?あるいは北海道のどこか?を思い浮かべる人が多いかもしれない。

 そんなイタリア野菜で、いま多くの一流シェフが注目する産地が山形県河北町だ。生産開始は平成23年とわずか5年前だが、現在は約45品種のイタリア野菜が作られるなど、生産は急拡大している。

 だが河北町には、驚くべきことにイタリア料理店が1つもない。あるのは「冷たい肉そば」の看板ばかり。一体なぜそんな町が急にイタリア野菜の一大産地になったのか。

作り方も食べ方もわからない
“1kg6000円の野菜”で町おこし

1kg3500円も!イタリア野菜で山形の田舎町が起死回生河北町商工会の商工振興課・課長であり、かほくイタリア野菜研究会の統括マネジャー・芦埜貴之さん

「トレヴィーゾという野菜がネットで、1kg6000円で売られていて。こんな高い野菜はありませんから、農家さんに作ってもらったら町おこしになると思ったんです」

 きっかけを話してくれたのは、河北町商工会の商工振興課・課長の芦埜(あしの)貴之さん。実は企業組合かほくイタリア野菜研究会の統括マネジャーでもある。芦埜さんはこれまで『冷たい肉そば』で河北町の町おこしを成功させた立役者の1人。次なるミッションとして、農商工連携事業の委託を受け、農産物のブランド化に取り組むことになった。しかし当時の芦埜さんは、町の農家との付き合いがほとんどなかったという。

「農家には縁もなくどう溶け込むか本当に不安でした。それでも話を聞く中で、『秘伝豆』が特産だとわかったんですが、“ブランド化”には農家さんから反発も。『作ったことないやつが何を言ってる』って、そりゃそうですよね」(芦埜さん)

 そうした農家からの反応やルートを巡るしがらみがあることも徐々に見えてくる。無謀そうにも思えるが、だからこそ「しがらみのない野菜に取り組もう」と決意した芦埜さん。でも“しがらみのない野菜”ってなんだろう…?隣町のイタリア料理店で打ち合わせをしていたときに、突然の出会いが訪れた。