日本円は「蚊帳の外」に、仮想通貨が独自の経済圏を形成

前回述べたICO(イニシャル・コイン・オファリング)のほとんどは、OpenLedgerという分散市場で行なわれている。

 これは金融取引の大きな進歩だ。なぜなら、カウンターパーティーリスクがほとんど消滅し、手数料が従来の株式市場の取引に比べて飛躍的に低下するからだ。

 新しい技術を開発した企業のスタートアップ資金は、これまでは株式市場におけるIPOによって行なわれてきた。しかし、今後は、分散市場におけるICOによってなされるだろう。

 仮想通貨はすでに独自の経済圏を形成している。問題は、日本円が蚊帳の外に置かれていることだ。

リーマンショックで大問題となった
カウンターパーティーリスク

 これまでの金融取引において、カウンターパーティーリスクが大きな問題であった。

「カウンターパーティーリスク」とは、決済の前に相手方が倒産して、契約不履行になるリスクである。

 カウンターパーティーリスクは、2008年のリーマンショックで大きな問題となった。CDSというデリバティブでの取引を大量に行なっていた投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻し、デリバティブ契約が実行できなくなった。さらに、保険のAIGが経営危機に陥り、同社が引き受けていたCDSが実行できなくなる危険が生じた。

 金融機関は他の金融機関を信用できなくなり、疑心暗鬼に陥って、マネーに走った。それが連鎖して、金融システムはメルトダウンの直前までいった。

 この問題は、デリバティブを取引所取引(市場取引)で行なうという形で対処された。

 金融取引では、相対取引と取引所取引とが区別される。相対取引の場合には、カウンターパーティーリスクが存在する。それに対して、取引所取引では、中央清算機関(クリアリングハウス)が売り手と買い手の間に入ってリスクを集中的に管理する。取引相手先が中央清算機関に一元化されるため、カウンターパーティーリスクが回避され、契約不履行が他の主体に連鎖するリスクがなくなる。

 しかし、その半面で、決済完了までに時間がかかり、手数料も増加するという問題が発生する。