米倉経団連会長の正論

 菅直人首相は、15日月曜日の夜になってやっと地方分と合わせた法人税率の5%引き下げを関係閣僚に指示した。遅くかつ小さいが、減税がないよりはいい。

 これに先立って、日本経団連の米倉弘昌会長は法人税減税の財源を企業関連の課税強化に求めようとする政府財務省筋の姿勢を「大臣方は日本経済の成長を本気になって考えているのか」と述べて批判した。

 企業に対する減税を企業に対する別の増税でファイナンスしようという無意味な発想が堂々と議論に上ることには恐れ入るが、米倉氏は、早くからこのことに対して憤慨を隠さなかった。

 また、政府内で、企業が法人税減税で得た恩恵を設備投資や雇用に充てることを確約する政労使合意の構想が浮上したことに対して、「資本主義でないような考え方を導入して貰っては困る」とこれを拒否した。

 何れも文句なしの正論だ。企業の経営者が費用と時間を掛けて集う日本経団連に関しては、既に時代の役割を終えた組織ではないかと思うことが少なくないのだが、日本がいわば時代を逆戻りするかのように相対的な力を落としている現在、当たり前の自由経済の原則を改めて説くことに、意味が生じているのかもしれない。

 現在、経済財政諮問会議は自民党時代の仕組みとして機能を停止してしまっているが、同会議が動いているなら、日本経団連会長として米倉氏が参加して、予算編成に対してまっとうな「経済常識」を主張してくれたのではないかと思うと残念だ。

 法人税率の実質5%引き下げは、海外とのビジネス立地競争の文脈で日本にビジネスを誘引する、或いは、引き留めるということに関しては、殆ど効果がないと思われるが、企業が生む付加価値の中から資本が得る収益率を改善するのだから、株価やオフィス用の不動産価格に対して下支え要因としてある程度の効果を持つのではないだろうか。

 次の引き下げを実現するための議論に早く入る必要があると思うが、引き下げが決まったことはポジティブに評価したい。