コリアタウン・大久保を
襲ったヘイトスピーチ

 日韓関係がこのように悪化した時、在日韓国人の立場はどうだったのか。

 東京・新宿区の大久保はコリアタウンとして20年の歴史がある。いまその中心は、職安通りに直角に交差し、大久保通りに向かって伸びる通称「イケメン通り」に移っている。ここでは2002年の日韓共催サッカーワールドカップのころから、韓流ブームに乗り、韓国系の店が増加した。しかし、2012年に李明博大統領が竹島に上陸すると、ヘイトスピーチ、ヘイトデモが頻繁に行われるようになり、韓国系の店の大半は売り上げが最盛期に比べ半減し、数十の飲食店、雑貨販売店などが閉鎖した。これに代わって、中国や他のアジア系店舗が新大久保に進出してくるようになっている。 

 日韓の政治的関係の悪化は、在日韓国人の生活に直結しており、その端的な例がヘイトスピーチである。2015年1月13日に放送されたNHK「クローズアップ現代」では、右派系市民グループによるデモが年間100件以上あり、そのヘイト行動の一端を紹介している。

「おまえら朝鮮人は腐れ朝鮮人なんだよ、腐れ朝鮮人。ゴキブリ、うじ虫、朝鮮人」

「殺せ、殺せ、朝鮮人。出てけ、出てけ、朝鮮人」

 こうしたスローガンには韓国人を殺せ、韓国人女性をレイプせよなど、犯罪行為を助長するものもある。放送では、韓国など周辺国との関係悪化がデモ参加者の心理に大きな影響を与えていると指摘し、「あり得ないような論理を使って、排斥するような動きが出てきたのが、新たな特徴」だとの識者の声を紹介している。

 ヘイトスピーチやデモに対しては2016年6月に「本邦外出身者に対する差別的言動の解消に向けた取り組みの推進に関する法律」(以下「ヘイトスピーチ対策法」)が成立施行された。この法律は、ヘイトスピーチ防止に向けた啓発・教育活動や被害者向け相談体制の充実などが柱であり、罰則は設けていない。その意味で不十分な法律であろう。

 しかし、同対策法が施行された直後の週末、川崎と渋谷で在日コリアン排斥を訴えるデモを巡り、主催者側とデモを阻止しようとするグループがもみ合いとなり、川崎市のデモは中止され、渋谷のデモは反対派が進路に座り込むなど騒然となった事件があった。日本人の良識が勝ったということであろう。この対策法がヘイトスピーチやデモを終わらせることを願わんばかりである。

韓国でも生じた
在日韓国人に対する嫌がらせ

 雑誌「SAPIO」(小学館)の11月号に「韓国の『在日差別』が酷すぎる」と題する記事があった。韓国で(慰安婦合意以降の)「反日封印」で恐ろしいことが起こっている。“在日企業”ロッテが叩かれ、血祭にあげられている、韓国が苦況に陥り、日韓合意の「反日封印」で捌け口を失った不満の矛先が在日韓国人に向けられていると報じている。