ヨーロッパにいると、日常的にさまざまな移民の話に遭遇する。たとえば、ロンドンの人びとは、全般的に移民をポジティブにとらえている。先日、金融街のあるエコノミストと面談したとき、彼は英国経済にとって重要な“資源”は英語と優秀な移民だと指摘した。

 英語が事実上の世界共通語になっていることは、英国に世界から優秀な人材を招き入れるうえで有利に働いている。彼らは巨額の所得税を払ってくれるので、英政府にとっても重要な存在だ。

 もちろん、英国でも、労働者階級の仕事が低賃金の移民に奪われているという不満はある。キャメロン政権は、その声に応えるため移民制限の方向性を示したが、経済界から猛反発が出た。11月下旬に発表された移民制限は、結局、豊かな起業家や投資家の流入をあまり防がないものになった。

 ただし、国際企業が英国に社員を1年以上転勤させる場合の制限は以前より厳しくなった。従来は最低年収2.4万ポンドだったが、4万ポンド(約520万円)に引き上げられた。低賃金の人は現地で雇えという方針である。