日本の国債発行は今後10年程度の間に行き詰まるであろうことを、前回示した。そこでの大前提は、国債発行額が今後も縮小しないことだ。そう考える基本的な理由は、今後人口高齢化に伴って社会保障給付は増大せざるをえないことだ。

 その一方で、税負担をそれを上回る率で引き上げるのは、極めて困難である。現実には、税負担の引き上げ率は、社会保障給付の増加率に及ばない可能性のほうが高い。そうであれば、国債発行額は現状よりさらに増加し、したがって財政破綻が前回の推計よりは早く生じることになる。以下では、この点をもう少し詳細に検討してみよう。

社会保障給付費は
65歳以上人口数と密接に関連している

 最初に、社会保障給付費の推移を【図1】に示す。ここで「社会保障給付費」とは、ILO(国際労働機関)が定めた基準に基づき、社会保障や社会福祉等の社会保障制度を通じて1年間に国民に給付される金銭またはサービスの合計額である。「医療」「年金」「福祉その他」に分類して示されている。

人口高齢化によって社会保障給付は自動的に増える

 その推移を見ると、1985年度に35.7兆円であった総額は、98年度にはその2倍に増加し、2007年度には2.5倍にまで増加した。08年度では94兆円を超えている。

 項目別に見ても、あらゆる項目が増加を続けている。とくに増加が著しいのは年金である。08年度の額は、85年度の3倍近くまで増加している。その結果、社会保障給付全体に占める年金の比重も高まった。85年度には47%であったが、89年度に50%を超え、90年代の末からは53%程度になっている。

 ところで、社会保障給付は、人口構造と密接な関係がある。とくに年金は、制度的に65歳以上人口とほぼ比例する関係にある。上述のように現在の社会保障給付の過半は年金なので、年金制度の抜本的な改革が行われない限り、今後も社会保障給付費が増加することは避けられない。また、医療費や介護費も、高齢者が増えると増える。