飲料業界首位のコカ・コーラと4位であるキリンビバレッジの提携交渉が明らかになった。当面は、物流や調達での協業にとどまるが、業界内では製造委託や事業売却の観測も噴出。業界再編加速のトリガーになるのは必至の情勢だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)

コカ・キリン飲料連合はキリン身売りへの布石かコカ・コーラ、キリンの経営計画にはどちらも「収益力アップ」の文字が。提携を機にサントリーやアサヒ飲料の利益率に近づけるか Photo by Hidekazu Izumi

 長らく、「もうからない事業」といわれてきた飲料業界。その市場構造からの脱皮を目指し、ついに飲料大手2社が手を握る。

 10月26日、国内清涼飲料業界で首位のコカ・コーラグループと同4位のキリンビバレッジを傘下に持つキリンホールディングス(HD)は、資本業務提携を検討していることを発表した。

 資本の持ち合い比率は数パーセント程度とみられ、店舗や自動販売機への商品の配送、原料や資材の調達で協業する予定。販売やマーケティング分野は提携に含まれないが、将来的に自動販売機に陳列する商品の相互供給や、共同商品の開発を行う可能性もある。

 現状は「まだこれから協議のテーブルに着くステージ」(キリン関係者)だが、両社の提携の実現はほぼ確実視されている。というのも、「今回の提携はキリンHDと米コカ・コーラ主導で、両社トップの意思によって動きだした案件」(キリン幹部)だからだ。

 きっかけとされるのは、米国で昨年行われたコカ・コーラグループの米国ボトラーの会合だ。コカ・コーラは、商品の原液を販売する本体と、原液を購入して商品の製造、販売を行うボトラーに分かれており、キリンは傘下に米国のボトラーを持つ。

「その会合に出席したキリンHDの磯崎功典社長と米コカ・コーラのムーター・ケント最高経営責任者(CEO)の間で今回の提携につながる会話がなされた」(キリン関係者)

 そして今年4月、日本の二大ボトラーであるコカ・コーライーストジャパンとコカ・コーラウエストが統合の基本合意を発表。来春には統合会社を立ち上げ、北海道や沖縄など一部の地域を除けば、東西統合により国内のコカ・コーラグループの物流や調達がほぼ統一される見通しが立った。

 また統合会社の社長には、かつてキリンが約4割出資していた近畿コカ・コーラ出身で、キリンとの間に太いパイプを持つ現コカ・ウエストの吉松民雄社長が就任する。これらが呼び水となり、キリンがトップ会談の内容を実現しようと動いたのである。