「今、政府は相続税の増税を考えていて、早ければ11年度から実施される可能性もあります」

 と語るのは、税理士の青木寿幸さん。現行の相続税の基礎控除額5000万円が、増税案では3000万円に減らされる可能性があるという。4人家族の例だと基礎控除額5000万円なら相続税はかからないが、基礎控除が3000万円になれば相続税が最大200万円かかる計算になる。

 「もともとはバブル時代の地価高騰で相続税を払えない人が続出したので基礎控除額を増やしたのですが、地価の下落とともに相続税を払う人が減少しました。08年には相続件数に占める課税件数の割合が4・2%まで落ち込んでいます。財政面で考えても相続税増税の流れは止められないでしょう」

 しかし、その一方で生前贈与をすれば恩恵が受けられる「相続時精算課税制度」の適用範囲を、子から孫に拡大する方針も出ている。

 「この改正によって、若い世代が親や祖父母の資産を早い時期に受け取って使いやすくなります」

 相続時精算課税制度以外にも、贈与税の基礎控除や住宅特例など生前贈与を有利に進めるポイントがあるので解説していこう。

■計画的に相続や贈与をする人が一番得をする

 生前贈与を有利にするには、3つの制度をうまく活用すること。

(1)贈与税の基礎控除

 「まず優先するのは、贈与税の基礎控除。1年に贈与を受けた合計額110万円までが非課税です」

 金額が少ないのが欠点だが、10年間贈与し続けたら合計で1100万円にもなる。

 「例えば、『子どもが小学校に上がる5年後に家を買いたい』と思っているなら、5年間毎年110万円ずつ贈与してもらえば頭金の足しになります。早くから計画的に贈与をすれば基礎控除だけでも相当な節税が可能なのです」

 ただし、この制度は贈与された人が「贈与を受けた」と認識していなければ、税務署に認められないことがある。それを避けるにはちょっとしたコツが必要だ。

 「まず、110万円以上贈与し、超過分の贈与税を払うこと。例えば120万円贈与すれば贈与税は1万円。それを申告すればその時点で税務署がお墨付きを与えたことになります。さらに、贈与された人がそのお金を自由に使えることを示すために、引き出して使うこと。最初から、普段使っている生活資金用の口座に振り込めばいいわけです。逆に、子ども名義の口座に振り込みながら、通帳は親が保管していれば、実質的に贈与がなかったと見なされ、控除が否認されることがあります」