トランプショックと英EU離脱に見る「世論調査の罪」Photo by Keiko Hitomi

 11月8日の米国大統領選で、大方の“予想”を裏切って共和党のドナルド・トランプ候補が当選した。金融市場では、そもそも「トランプリスク」といわれ、リスクオフ(リスク対応)モードになってはいたが、それでも「トランプショック」が発生し、市場は乱高下した。

 遡れば今年6月23日には英国での国民投票でブレグジット(英国のEU離脱)が、これも大方の“予想”を裏切って決まった。金融市場は当然、乱高下している。どうしてこのようなことが起こるのか。

世論調査に問題あり

 このような大きな案件の“予想”は、世論調査によって形成されている。この世論調査が問題なのである。今回の選挙もワシントンの公的機関に所属する友人たちと情報交換をしていたが、彼らも同意見だ。

 民主主義国家の国民は法的には平等だ。しかしそうは言っても経済的には階層(階級)があり、上流・中流・庶民と分けることができる。現在の一流マスコミの世論調査は、このうち上流と中流の階層から情報を取ってきており、庶民の層がその対象となっていないのではないか。庶民の層は世の中に不満を持っており、彼らがとにかく変化を求め、トランプもブレグジットも賛成した。彼らの声は世論調査には反映されことなく、選挙の開票当日になって突然"姿を現す”のである。まさにそのような問題が具現化している。

 特に金融市場では、経済指標の発表でもそうだが、相場は予想(期待)と現実のギャップで動く。国政レベルの選挙でも、まさにそのような状況になっているのである。

 ちなみに英国の場合、政治的に国民投票をする必然性はない。キャメロン元首相が大丈夫だろうと思い決めたものである。最近、別途議会の承認が必要ということになり、そもそものEU離脱自体がどうなるかわからなくなっている。

 国民投票の時も、大衆紙『SUN』が 直前に(真偽の程は不明であるが)「女王陛下は離脱を望んでいる」と報道したことも原因の一つである。庶民の階層に大きく響いたのである。