彼は大衆の怒りを移民や自由貿易など、国外に向けて人気を博し、自分もその一員である既成勢力(エスタブリッシュメント)に挑戦する姿勢を演じて選挙では成功した。

 彼の選挙戦での発言は、国際問題に無知、無関心な米国の大衆が快哉を叫ぶようなことを、脈絡もなく実現性も考えずに羅列したにすぎず、雑多な果物の切り端にワインをかけたフルーツポンチに似ている。誇大広告だから就任すればあまり実行はできず、彼に投票した人々はいま以上に絶望しそうだ。4年後の大統領選挙ではさらに排外的、強権的な候補者が出現しかねない、との危惧を感じずにはおれない。

 

日本が100%負担をするなら
米軍将兵は日本の傭兵に

 日本に関してトランプ氏は「日本は牛肉に高い関税を掛けている。こちらも日本製品に高い関税を掛けよう」とか「日本は不公正な貿易で米国人の職を奪っている。安倍は殺人者だ」「日本に駐留する米軍経費は100%日本に支払わせる。条件によっては米軍を撤退させる」などと叫んでいた。これらは1980年代“ジャパン・バッシング”の時期に言われたことを蒸し返しているだけだ。

 彼は日本が在日米軍関係の経費をどれ程負担しているか、全く知らないのだろう。今年度予算で防衛省は基地労働者2万3000人余の給与1458億円、民有地の地代、周辺対策、漁業補償などに1852億円、電気・水道料金249億円、建設工事などに206億円、米海兵隊のグアム移転や厚木基地から岩国基地への空母艦機械の移転に1794億円など、5566億円を出すほか、他省庁が昨年度米軍基地がある地方自治体に出した基地交付金が388億円で合計すると5954億円になる。

 その外にも国有地を無償で米軍に貸している推定地代が、地方自治体などに貸す場合の安い地代で計算しても、昨年度で1658億円で、これも含めると日本側の負担は7612億円に達する。在日米軍の人員は昨年9月末で5万2060人だから米軍1人当たり1145万円の出費だ。

 米国の在日米軍関係の支出は約55億ドル(約5800億円)で、その大部分は人件・糧食費、一部が艦艇、航空機などの燃料やそれらの維持費だ。もし日本が100%負担をするなら、米軍将兵は日本政府から給料を貰うことになり傭兵化する。「自衛隊の指揮下に入るのかね」との冗談も聞かれる程だ。

 そもそも「日米地位協定」の24条では、日本は施設・区域(国有地)を無償で貸し、民有地なら地代を払うが、それ以外のすべての経費は「合衆国が負担する」と決まっている。だが米国はベトナム戦争後財政難に陥り、さらにドルの価値が360円から約180円へと下落したため、基地労働者の賃金はドルでは突然2倍になり、永年勤続の日本人警備主任の給料が米軍の基地司令より高い、という珍事態も起きた。