現実には米国はすでに冷戦終了後、欧州、韓国の駐留部隊を大幅に削減しており、財政状況や「アメリカ・ファースト」の国民感情からも、海外関与は減る方向だろう。だがその海軍は他のすべての国の海軍が束になっても勝負にならない程の絶対的優勢だ。米国は将来も世界的制海権を保持し、戦略的には島国である米本国の安全と国際的発言力を確保しようとするだろう。西大平洋で制海権を保つには、横須賀、佐世保の2港および空母の入港中に艦載機が使う岩国飛行場は不可欠だ。ハワイ、グアムは背後に工場地帯がなく、艦船の整備、修理能力に乏しい。

 米海軍にとり、中国海軍は地上基地戦闘機の行動半径(約1000km)から出れば処理容易な標的でしかなく、対潜水艦作戦能力も無きに等しい。世界最大の貿易国である中国はインド洋、太平洋の長大な通商航路を米海軍に対抗して守ることはまず将来も不可能で、経済が拡大し、海外の資源と市場に依存すればするほど、世界的制海権を握る米国とは協調する他ない形勢だ。

 米国も3兆ドル以上の外貨準備の大半をウォール街などで運用する中国からの融資、投資に依存していて、急速に拡大する中国市場の確保を目指す。米国が将来仮に日本の海軍基地の管理権を海上自衛隊に返還しても、米海軍がそれを利用できることは極めて重要な国益だ。米海軍は英国、イタリア等ではその国の海軍の基地を使っている。

 もしトランプ氏が「米軍を日本から撤退させるぞ」と脅すなら反対せず、「結構なお話ですな」と応じればよい。やがて相手は「なんとか海軍だけでも置かせてほしい」と下手に出て、日本は「守ってもらっている」のではなく、タダで置いてやり、光熱費まで出している気前の良い家主の立場に立てるだろう。トランプ氏が「米軍撤退」を言えば、それこそ日本にとって「トランプ・カード」(切り札)になる。ただし、追随が習性となっている外務官僚や安倍首相にその度胸があれば、の話だ。