橘玲の日々刻々 2016年11月24日

トランプ大統領誕生は
米国民衆による「反知性主義」の反乱だった
[橘玲の日々刻々]

アメリカのエリートは極端にリベラルに寄っている

 それでは、新上流階級はどのような政治信条を持っているのだろうか。マレーはこれをリベラル指数(LQ)によって計測した。

 LQは「民主的行動のためのアメリカ人」(ADA)という団体が集計した連邦議会議員の投票行動に対する指標で、100なら完全なリベラル、0なら完全な保守となる(「純粋リベラル」はLQ90以上、「リベラル」は75~89、「中道」は25~74、「保守」は10~24、「純粋保守」は0~9)。

 まず全体的な傾向だが、2002年、2004年、2006年、2008年の選挙で選ばれた連邦議会議員のLQを調べたところ平均は51.5で、議員の57%が「純粋リベラル」か「純粋保守」すなわち左右どちらかに極端に偏っており、「中道」はわずか21%だった。これはアメリカ社会が共和党支持と民主党支持で分断している証拠にも思えるが、アメリカ人の政治信条は右から左までほぼ均等だということもできる(図①)。

 

 次いでマレーは、スーパーZIPの住民の政治信条を調べてみた。それが図②だが、二極化の度合いはすこし高くなっているが中道も増え、その分布は平均的なアメリカ人とほとんど変わらない。

 

 この結果を意外だと思うかもしれないが、じつはこれにはすこし仕掛けがあって、スーパーZIPのなかからニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルス、サンフランシスコ一帯の4つの巨大クラスターを除いたものなのだ。

 図③が、その4大クラスターの政治信条を示したものだ。これを見れば一目瞭然だが、新上流階級の巨大集積では、成人人口の64%が「純粋リベラル」(いわゆる「極左」)の議員によって代表されていて、保守派は「純粋保守」と「保守」を合わせても19%しかいない(図版はすべてマレー前掲書より作成)。

 これをもとにマレーは、アメリカの政治、経済、文化に直截的な影響力を持つ(狭義の)エリートの価値観は極端に「リベラル」に偏っており、それは平均的なアメリカ人はもちろん、4大クラスター以外のスーパーZIPに住む新上流階級とも大きく異なっていることを指摘した。

 これを見ると、今回の大統領選が、知識社会アメリカを「支配」する彼ら新上流階級に対する大衆の「反知性主義」の反乱だったことがよくわかる。その一方で4大クラスターに集住する新上流階級(ヒッピームーヴメントの末裔たち)は、自分たちの価値観を真っ向から否定する新しい大統領をぜったいに認めないだろう。

 これが今後4年間の、アメリカ社会の基本的な構図なのだ。

 

 

橘 玲(たちばな あきら)

 作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』(ダイヤモンド社)など。中国人の考え方、反日、歴史問題、不動産バブルなど「中国という大問題」に切り込んだ『橘玲の中国私論』が絶賛発売中。近刊『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)が30万部のベストセラーに。

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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