中高年夫婦は
性交渉に工夫を

 “中高年型”慢性膀胱炎という病名に、亜矢さんはがっくりきてしまった。

(そりゃあ50歳だもの、もうお姉さんじゃないじゃないことは分かっているけれど。中高年っていう言葉はやっぱり重たいなぁ。私はもう、正真正銘のおばさんなのよね)

 帰宅し、しょんぼりしていると、直太郎さんが心配そうに尋ねてきた。

「病院行ってきたんだよね、どうだった?」

「うん、年のせいだから大したことないって。男性が、おしっこの切れが悪くなったりするよね、あんな感じかなぁ」

 適当に説明する亜矢さん。

「ふう~ん、ならよかったね」

「よかったかな」

「そうだよ、がんとかさ、重大な病気だったらどうしようって心配してたから」

「そっか(笑)」

「でも、治療はしないの?」

「するよ。ホルモン補充療法と漢方薬を中心にする方法があるんだって。ホルモン補充療法は副作用の可能性があるし、面倒だから、漢方薬にしてもらったわ。八味地黄丸(ハチミジオウガン)、牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)とか、よく効くらしいのよ。それとね…」

「うん?」

「セックスは男性器を清潔にして、前戯には時間をかけなさいって。私の膣の中が、傷つきやすくなっているらしいわ。優しくしてね、って」

 亜矢さんは小声で囁くと、パッと頬を赤らめた。

(それにしても…)

 と亜矢さんは思う。

(膀胱炎にも、若い人の膀胱炎と中高年の膀胱炎があるなんて、知らなかったわ。20代の頃から繰り返しかかってきたから、同じ治療をすれば治ると思っていたのに、そうじゃないのよね。これが年をとるってことなのね。しかも、年代によって治し方が違う病気は、膀胱炎以外にも結構多いっていうじゃない。これは、新しい診療科を増やさないといけないんじゃないかしら)

 つまり、子どもの病気を治すには小児科があるように、中高年の病気を治すには専門の中高年科がこれからは必要なのではないだろうか。既に、老年科はあるけれど。