>>(上)より続く

 妻は初めての育児で上手くいかないことも多くノイローゼ気味。些細なことで豊さんと喧嘩になることも多々あり、妻は豊さんに当たり散らさないよう気を使って、豊さんが帰宅する前に夕食を済ませ、夕食の時間が重ならないようにしたのですが、そのことが母親の耳に入ったようで「息子に寂しい思いをさせるんじゃないわよ!あんたは良いお母さんになれっこない、おっぱいも出ないわ!!」と母親は妻を叱りつけました。

「良かれ」と思い、頼まれてもいないのにしゃしゃり出たのでしょう。しかし、夫の両親と同居している場合、ただでさえ妻は肩身が狭いのに、母親が夫の肩を持てば、今まで何とか均衡を保ってきた夫婦のパワーバランスが崩れてしまい、「どうせ私の意見は聞いてくれない」と妻はますます卑屈になるのは分かりきっているのですが…。いい歳になっても「母親が息子を守るのは当然」と思っていれば、家庭全体を俯瞰して見るのは不可能でしょう。

 妻は産後で心身とも疲れ果てているのに、酷い言葉を浴びせられ、深く傷つくのは無理もありません。母親だって32年前(豊さんを産んだ直後)は同じように大変な経験をしており、まさか母親から責められると思っていなかったので「義母さんは私の気持ちを分かってくれない」と妻はますます母親、そして高橋家への不信感を募らせていったのです。

妻が同居のストレスから蕁麻疹を発症
ようやく別居も母親が仰天提案

 妻が一つ屋根の下で、姑からの小言に我慢し続けてきたのは、豊さんの「新築を建てる」を信じていたからです。しかし、具体的な話は遅々として進まず、「お母さんとの同居が心地いいから、家を新築しようとしないのでは?」と不満を募らせる日々…姑との同居がさらに3年経過したところで、妻はストレスから蕁麻疹を発症してしまったので、豊さんもようやく重い腰を上げました。

 ところが「新居には私たちが住み、あなたたちは今の家に残るのよ!」と家族会議の場で母親がおかしなことを言い出したのです。「おかしいじゃないですか!」と反対したのですが、妻は、新居に住むのは自分たち夫婦、今の家に残るのは両親とばかり思っていたのだから当然のことです。しかし、高橋家では嫁の立場は弱いので、妻の意見が通るはずもなく、結局、母親に言いなりになるしかなかったのです。

 どちらがどちらの家に住むにせよ、これで両親との同居生活に終止符を打つことができるので妻は渋々、不本意な話を受け入れたのですが、また母親が余計な一言を挟んできたのです。「これからは私の部屋を使いなさい」と。

 もしかしたら母親は、嫁姑関係は良好そのもの、今まで妻のことを傷つけたという自覚はなく、自分(母親)は妻から好かれていると本気で思っているのかもしれません。だからこそ、妻を喜ばせるために「自分の部屋を譲りたい」と提案したのでしょう。しかし妻は蕁麻疹を発症するほど母親が嫌いなのです。それなのに母親の使用感、生活臭、そして存在感が染み付いた部屋に住むなど、「虫唾が走る」ことに違いありません。他にも部屋はあるのに、わざわざ母親の部屋を指定されるなんて嫌がらせ以外の何物でもありませんが、老婆心丸出しの母親が妻の本音を察するのは不可能でしょう。