毎日遅くまで残業をしているあなた、その仕事は本当に重要な仕事だといえるだろうか。

「会社の仕事で極めて重要度が高いものはほとんどない」

そう語るのは、東レ経営研究所の特別顧問である佐々木常夫氏だ。佐々木氏は、自らが課長に昇進すると同時にある改革を実行し、「部下を定時に帰すマネジメント」を実現させた。では、具体的にどのような方法で部下の効率を上げ、定時帰宅に導いたのか。

対談の後編である今回は、佐々木氏とネットイヤーグループの石黒不二代社長が本当に効率的な仕事のマネジメント方法を探っていくと同時に、ビジネスパーソンが定年後に寂しい老後を迎えないための心構えについても考えた。型破りな2人の仕事術、マネジメント法は、効率的に仕事をしたい人なら必見だ。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

重要度の高い仕事なんて多くない
「業務の棚卸し」で残業はゼロにできる

――前回、佐々木さんはご自身が課長になった際、部下に対して定時の6時に帰るよう指導したとおっしゃっていました。実際、部下の皆さんが定時に帰宅できるように、どのような改革を行ったのですか。

佐々木常夫×石黒不二代 型破り放談【後編】<br />会社人間脱出が“寂しい老後”回避の第一歩!<br />部下を定時に帰す「賢い上司のマネジメント」ささき・つねお/東レ経営研究所特別顧問。1944年秋田市生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年東レ入社。病に倒れた妻と障害のある子どもを抱えながら仕事と家庭生活を両立させ、2001年、東レ同期トップで取締役となり、03年より東レ経営研究所社長。10年より現職。家庭と仕事を両立するビジネスマンの象徴的存在。近著に『働く君に送る25の言葉』(WAVE出版)がある。

佐々木 まず、私が課長になってすぐに「業務の棚卸し」をしました。私は、戦略的な計画立案が業務を半減させると考えているからです。

 私の課には伝統的に、上司に対して1週間ごとに何の仕事をどれくらいやったかを報告をする義務がありました。それを1ヵ月単位に変え、どんな仕事を何日間かけたかという分析と最も重要な仕事を5として5段階評価で仕事の重要度ランキングを部下にさせました。

 すると、部下のA君は、私から見れば重要度評価が2か3の仕事を2ヵ月間もやっているわけ。「これは2週間で済ませる仕事だろ」と指摘すると、彼は「いや、これは重要度4ですよ」と反論をしてきましたね。でも、会社の仕事なんて、重要度が4か5のものはほとんどありませんよ。多くが2か3のものです。社員の多くが「自分の仕事はすごく大事」だと思いこんでいるために、こうした状況になるのです。それにもかかわらず、「君がやっている仕事はたいしたことがないよ」と多くの上司は言いません。そう言えば、部下のモチベーション下がってしまうからです。

 一方、別の部下であるB君は、私から見たら極めて重要な仕事を3週間ほどやって途中でやめていました。本来ならば、2ヵ月かけてでもやるべきだと私は指導しました。

 そうして必要日数を入れ、全部を足しあげたら、なんと実績の4割の日数で終わる仕事だったということがわかりました。もちろん会社の仕事というのは、そんな簡単に進むものではないので、やってみなければわからないところもありますよ。でも、実際は多くが半分で終わるものなのです。私の課では、月60時間の残業をしていましたが、残業の必要はなく、毎日3時半に帰れたということです。結果として、さすがに残業ゼロにはなりませんでしたが、月の残業が一桁になりましたね。