『週刊ダイヤモンド』12月10日号の第1特集は「商社の英語〜門外不出のサバイバル習得法〜」です。語学エリートの商社マンとて、最初から英語が堪能な人ばかりではありません。本誌では50人以上の商社マンを取材し、彼らに独自の英語上達法を教えてもらいました。英語習得を諦めてきたあなたにも、ぴったりの勉強法がみつかるはずです。

 TOEICのスコアが身長より低い人。中山慎一郎さんは、双日社内で何とも不名誉な称号を与えられてしまった。内定時のスコアは170点。TOEICは990点満点の四択テストなので、誰でも約250点は取れるはず。「確率論を超えた」と、周囲に笑われたものだった。

 中山さんは、入社当時は本気でプロ野球選手を志望していた。双日マンとして生きる決断をしたのが入社2年目の秋。そこから猛勉強を始める。実に3年半もの間、東京の会社と千葉の社員寮との往復2時間の通勤時間を全て、英語にささげた。教材は、『TOEICテストはじめから英単語2500語』と文法書『Forest』を使い、内容を頭にたたき込んだ。

 今春の試験で680点を獲得。8月に初めて一人で海外出張を経験した。「勉強当初は完璧を目指して、外国映画を英語で見ようとして失敗しました。野球も英語も継続のコツは焦らずに現実的な目標を立てること」(中山さん)。次なるターゲットは、海外駐在要件の730点だ。

 2人目の澤井遼さんは、外国人の同僚を使い倒した。理系出身で、内定時のスコアは300点。ランチ時や勤務後に、TOEIC対策のための時間を設け、米国人や英国人の同僚らに、正しい文法表現から時間配分まで、ボランティアで教えてもらった。今春、海外駐在要件を超える780点を獲得できただけでなく、「日常会話までできるようになりました」(澤井さん)。まさに一石二鳥である。

 とはいえ、試行錯誤もあった。「最初からリスニングや長文読解に手を出して遠回りしました。英語力がゼロの人は、単語や文法などの基礎を先に固めるべき」(同)とアドバイスする。

「YouTubeでサッカーを見る暇があるんなら、単語の一つでも覚えたら?」。妻の何げない一言で、“聖地”トイレのドアは英単語の付箋で埋め尽くされた。

 3人目の山田太郎さん(仮名)の持ち点は285点。胃腸が弱くトイレにこもる時間が人よりも長いことから、「用を足す時間すらもったいなくて、勉強に充てる時間を捻出しました」(山田さん)。

 山田さんの学習法は一風変わっている。TOEIC対策の勉強法が肌に合わず、留学もしないのに、TOEFL対策をすることによってTOEICスコアを引き上げることにしたのだ。

 50万円の巨費を投じて、TOEFLに強い予備校アゴス・ジャパンに4カ月通った。アゴスの宿題の量は恐ろしく膨大で、「1日5時間は勉強しないと終わらないレベル」(同)なのだそうだ。トイレにいる時間すらもったいなくなるのもうなずける。集中期間中は、「社内の飲み会の9割5分は断った。周囲に、勉強を“やってるぜ感”を醸し出すこともモチベーションアップにつながる」(同)のだという。覚えた単語は2000語。ビジネスよりも日常会話〝寄り〟のTOEFL対策でも、TOEIC775点をゲットできた。

 急がば回れ。双日3人衆に共通しているのは、地道な勉強である。英語学習に奇手妙手はない。

緊急100社調査でわかった 英語必修のタイムリミット

『週刊ダイヤモンド』12月10日号の第1特集は、「商社の英語〜門外不出のサバイバル習得法〜」です。

 今も昔も、「英語がデキない商社マンは人間以下である」(三井物産のベテラン社員)という実態は変わっていません。グローバルで事業を展開する日本の総合商社には、海外からの電話やメールが多く、「英語の巧拙はあるけれども、一般職社員も含めて全社員が受け答えできることが前提」(三菱商事人事部)となっているからです。

 そんな語学エリートの商社マンですが、初めから語学が堪能だった人ばかりではありません。海外駐在が決まったり、昇格に必要だったりと、必要に迫られて語学を習得した人たちも多いのです。本誌では、50人以上の現役商社マンに取材を敢行し、彼らにとっておきの語学習得法を明かしてもらいました。

 一口に商社マンと言っても、英語をほとんど使わない国内組から帰国子女まで、若手からベテランまで、部門や年代によって語学力にバラツキがあります。英語などの語学習得法の中身も千差万別で、「50人50色」。特集では、50通りの習得法を、コストと難易度で分類しわかりやすく紹介しました。

 これだけのケーススタディがあれば、これまで英語習得にチャレンジしては挫折を繰り返してきたあなたでも、まねできる勉強法がみつかるはずです。

 また、大手企業100社を対象に、語学スキルに関する緊急アンケートも行ないました。5年前に実施した同様のアンケートと比較して判明したのは、「もう英語から逃れることはできない」という現実でした。すでに、8割の企業では、英語会議を導入しています。

「英語ができなければ人にあらず」は、商社だけの話ではなくなっているようです。

 それどころか、商社を含めた大手企業では、重要視する言語が英語から「次の言語」へ移っている実態も明らかになりました。中国語、ロシア語、スペイン語――。ビジネスの需要に応じて、企業が注力すべき言語も変容しています。

 ビジネスにおいて、言語は一つの武器に過ぎません。でも、武器を持たずに戦場へ出ることができないのも事実です。

 今回がラストチャンス!本誌をご覧いただいて“やる気スイッチ”が入らなければ、もう英語習得は諦めてもいいというくらいの特集をつくりました。これから英語習得を志す人も、英語力を維持したい人も、習得の最終手段として本誌を活用していただければうれしいです。