いまだに強い「引きこもり」への偏見
決して“甘え”で片付けられる問題ではない

「引きこもり」というと、いまだに「裕福な家庭だから…」とか「甘えている」「親が甘やかしている」などといった誤解や偏見が根強く残っている。

 しかし、これまで何度も発信してきたように、実際には、生活保護を受けられるような貧困世帯にも、引きこもる人は多い。

 そして、何とかしなければいけないと思っているのに、仕事などに行こうとすると、身体が動かなくなったり、おかしくなったり、痛くなったりするなどのメンタル的な問題を抱えてしまって、社会に出ることができなくなってしまう。それが「引きこもり」状態の人たちの実情だ。

「ニート」という、日本では「働いたら負けかな」的な人たちのことを指すであろう、定義のはっきりしない造語があるとすれば、引きこもりはそれとはまったく違う分類の話である。

 そればかりか、他人や社会に迷惑をかけてはいけないからと、仕事に就くことを諦めたり、生活保護を申請しなかったりする。中には、自分が職に就いたら、それによって職を奪われてしまう人が出るのではないかと心配して自重してしまう人までいるほどだ。

 引きこもりの中核にいる人たちは、一般の人が気づかないようなモノでも全身で感じ取れるくらい、感性が研ぎ澄まされている。だから、他人を気遣うあまり、人一倍疲れやすいし、挫折もする。そして、地域の中で埋もれるうちに、世間の視線が気になりだして、抜け出せなくなるのではないかと思えるのである。

誰にも相談できず埋もれていく
そんな当事者と家族が全国に

 都内に住む30代の男性は、電車に乗ると、腹や頭などが痛くなって、家に引き返してしまう。長時間、電車に乗ることができなくて、目的地に着くことができない。

 さんざん無理を重ねてきてしまったからであろう。「自分はもう社会には出られないのではないか」という。

 病院で診てもらい、薬を処方してもらったが、外に出るのがつらくなり、ほとんど家で寝てばかりの毎日。これも、休ませようという何かの防衛反応なのだろう。当初は、本人なりに頑張って外に出ていたものの、次第に人間関係も薄れていった。