名古屋のトリプル投票は河村陣営の歴史的大勝利となった。ノーを突きつけられたのは、既成政党と職業議員たち。異端の政治家・河村たかし市長が始めた「ナゴヤ庶民革命」は愛知県下に広がり、さらには日本各地に伝播しつつある。各地の地域政党が勢いづくのは間違いない。統一地方選や国政に与える影響は甚大だ。

トリプル投票大勝利が全国へ波及<br />「河村旋風」で勢いづく地域政党酷暑下の署名集めが真冬の大勝利となって結実した。当選を果たした河村氏は恒例のお湯浴びで雄叫びを上げ(右)、大村氏との共同記者会見で息の合ったところを見せた
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「新しい民主主義の時代をつくる重い扉を、名古屋の皆さんが開けた歴史的な日です」

 圧倒的な勝利で再選を果たした河村たかし市長は、事務所前の特設ステージで喜びを爆発させた。そして、バケツの湯を頭から浴びる恒例のパフォーマンスを繰り返した。夜8時過ぎ、真冬の名古屋が熱気に包まれた。

トリプル投票大勝利が全国へ波及<br />「河村旋風」で勢いづく地域政党

 名古屋のトリプル投票が2月6日に投開票され、どえらい結果となった。出直し市長選に臨んだ河村氏は前回(2009年4月)を約15万票上回る、66万票あまりを獲得して大勝。愛知県知事選でタッグを組んだ大村秀章前衆院議員も、次点候補に約100万票もの大差をつけて初当選した。

 さらに、名古屋市議会解散の是非を問う住民投票は解散賛成が4分の3近くに達し、河村氏の得票数を3万票あまり上回った。政令指定都市初の市議会リコールが成立し、トリプル投票に持ち込んだ河村戦略がものの見事に奏功した。

 トリプル結果に茫然自失となったのは、落選した候補者だけではなかった。議会や既成政党の面々も驚きで言葉を失った。勝敗の行方は見えていたが、ここまで大差をつけられるとは思ってもいなかったからだ。議会や既成政党に対する有権者の不信の強さを見せつけられた。河村旋風によって各地に生まれつつある「地域政党」が勢いづくのは間違いない。ナゴヤ庶民革命の伝播である。

政治手法に賛否も
公約を貫いた河村氏

 民意の圧倒的な支持を集める河村市長の政治手法に対し、冷ややかな視線を送る識者が少なくない。減税という有権者に心地よいことだけを言う「ポピュリズム」であり、また、議会というわかりやすい敵をつくって有権者の関心を集める「劇場型」政治家との指摘である。河村市長の強烈な個性も加わり、学者や行政関係者から異端視されがちである。