日本って意外と新興国?
日本と新興国の「2つの類似性」

 日本って意外と新興国? もちろん、これは日本の経済規模や所得水準について言っているのではない。これらの点において、日本は明らかに先進国の一員だ。しかし2011年の景気を展望する際、2つの意味で日本には新興国との「類似性」があることに注意したい。

 第一に、鉱工業生産のボラ(ボラティリティ=「振れ」の略)の高さ。2000年代半ば以降、日本の生産は韓国や台湾並みにボラが大きくなっている。

 第二に、消費者物価(CPI)における食料のウェイトの高さ。これは家計の平均的な支出に占める食料に対する支出の割合に相当する。米国、EU27ヵ国はいずれもこのウェイトが14%と低い。

 一方、日本は26%と韓国(27%)、台湾(26%)並みに高い。平時であれば、この意味での新興国との類似性は問題にならない。ところが足元で進むグローバルな食料価格の急騰を考慮すると、今後の景気を展望する上で、この類似性は無視できない。

先進国ではなく、東アジアの
一員としての景気回復

 日本の景気は昨年11月頃に「足踏み」を脱し、「再加速」に向かい始めた。きっかけは、鉱工業生産と輸出の上方反転。生産は11月に、輸出は12月に上向いた(図表1参照)。輸出を最大の牽引役として、景気は循環回復の歩みを着実に進めるであろう。

実は先進国らしからぬ日本~生産と物価に見る新興国との類似性――森田京平・バークレイズ・キャピタル証券 ディレクター/チーフエコノミスト

 しかも、昨年末に生産が上向き始めたのは日本だけではない。台湾や韓国でも同じように生産が増加し始めた(図表2参照)。