厳しいフィードバックをくれた同僚との交流をやめた従業員は、翌年の業績が低下傾向にあった――。誰もが真摯に受けとめるべき研究結果を紹介する。


 あなたの仕事上の人的ネットワークについて考えてみよう。そのなかで、パフォーマンスの向上に力を貸してくれる人や、苦境の時に精神的な支えとなってくれる人を思い浮かべてほしい。大半の例に漏れなければ、頭に浮かんだその人たちはあなたと気が合う相手であり、あなたによい印象を持っている相手だろう。

 では、そのネットワークのなかに、厳しいフィードバックを実際にくれた人はどれほどいるだろうか。答えはおそらく、「あまりいない」であろう。

 ハーバード・ビジネススクールのポール・グリーン、ノースカロライナ大学のブラッドレイ・スターツと私が最近実施した共同研究によれば、人は「自己評価よりも厳しいフィードバックをくれる相手」を遠ざける傾向がある(英語報告書)。そのような相手のアドバイスには耳を傾けず、交流を完全に断つことを選びがちなのだ。自分のよいところばかりを見てくれる相手と絆を強める、という傾向が人にはあると思われる。

 我々は調査の一環で、食品製造と農業関連事業を営む某米国企業で働く、正社員300人以上の4年にわたる記録をデータとして採用した。同社は柔軟な組織体制を採っており、社員には年間ベースで自分の役割の範囲、責任、成果物をある程度自由に決定する権利がある。

 そして、同僚にフィードバックを提供する責任も負っている。実際、マネジャーによる勤務評定というものがない。各社員は毎年、自分自身と指定された同僚たちについて、過去1年間の評価を行う。オンラインで記入する自己評価と相互評価の質問項目はまったく同じだ。たとえば「リーダーシップとイニシアティブ」「コミュニケーションと調整」「人々をまとめるスキル」といった領域について、自身と同僚を評価する。さらに同僚については、建設的なコメントを記す空欄が設けられている。

 我々は、社員が同僚から受けたフィードバックにどう反応したかを調べるために、この相互評価プロセスのデータと、会社が毎年収集している「各社員の現在のネットワーク」のデータを分析した。

 その際に注目したのは「自発的な関係」だ。つまり、社員が自発的に請け負うプロジェクトや活動で接した同僚と、その後も交流を継続するかやめるかをみずから選べる関係性である(なお、「義務的な関係」に選択肢はない。同じ職能や部署に属する社員との関係は避けては通れない)。

 分析の結果はこうであった。同僚に「反証的」な(つまり本人評価よりも厳しい)フィードバックを寄せた人は、「確証的」なフィードバックの提供者に比べ、その翌年に当該社員のネットワークから外される傾向が高かったのだ。より具体的には、7段階評価で同僚からの評価が自己評価よりも1段階低いと、社員がこの同僚との関係を断つ確率が44%高かった。

 また、仕事上の関係維持が避けられない(義務的な関係の)同僚から厳しいフィードバックを受けた場合についても、発見があった。これまでつながりが薄かった新たな同僚を探し求めることで、もっと居心地のよいネットワークをつくろうと試みていたのだ。